第6話 わたしのさようなら
予定2019/11/22 01:34
夜になると団地に少女の泣き声がこだまする。
確かに泣いているのだが、どこで泣いているのか分からない。
ある日自治会の会合でその話題が出た。
聞いた事もある者もいれば、そうでない者も。
ノイローゼになりそうなので、警察に連絡を入れて捜索を頼んだが
警察がやってくると、ぴたりと泣き声が止まる。
団地の住民は自治会のメンバー複数人を3チームに分け、鳴き声を聞いた者が召集をかけ探す事にした。
ある日、召集がかかり探しにいく段になって、ある人間には確かに今も少女の声が聞こえるが、半数には何も聞こえなかった。
気味が悪く、メンバー内で疑心暗鬼になりつつも
確かに聞こえると言い切る人間を中心に捜索を始めた。
団地のエントランスに戻ってくると、一人、戻らない者がいる。
彼は翌日も、そのまた翌日も戻らず、ついに二度とその姿を見る事はなかった。一週間後、また少女の声が夜長に流れる。
前回の事件があったので、今度は警察も加わり、最低二人組になって捜索を再開した。
エントランスに集まる頃には、やはり一人欠けていた。
組んでいた女は「気づいたら側にいなかった」と言う。
警官が一緒にいたので、事件は大きく取り扱われた。
それから、数年が経過した。何も出ては来なかった。
少女の泣き声は止んだが、住民は一世帯、また一世帯と去っていった。
団地のオーナーもとうとう手放すに至った。新しい入居者が誰もいなかったからだ。
そして数年が経過した。
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「ハァハァ・・・・・・」
は夜のシャッター街をかけた。
足音が闇の奥へ奥へと薄く広がっていき、どこにいるのかが追っ手に把握される。まばらなスニーカーがアスファルトを踏む音は が休む事を許さなかった。
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「じいちゃん。何で私、学校へ行けないの?」
はベランダに佇み不思議そうに訪ねてくる。
星の見えない空だ。月の明かりでうっすらと雲の輪郭は見える。
「必要ないからだ。 は賢いからね」
「賢いってつまんないね」
顔は見えないが、寂しげな声だった。
こんな誤魔化しがいつまで通用するかはわからない。
彼女も歳を経る毎に知能は発達し、欲もでる。そして反抗期を迎える、いや、その前に間違いをただし、社会に適応させなければならない。
綺麗事だけで倫理観が備わる可能性は・・・・・・。
「じいちゃん、私、お買い物いきたい」
「行こうか」
「私、じいちゃんのぶんも持つ。役に立つでしょ?」
「ああ、助かるよ。片手じゃ のお菓子も入れられないからな」
「へへへ」
片腕を失った。
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