広場

 広場では既に敵味方入り乱れて戦闘が行われていた。ラバンとその師団は一番数の少ない敵師団の側面に向かった。キラのユニットの弓兵が弓矢を射た。矢が敵兵の腕に刺さる。続けて弓矢を浴びせると、敵が怯んだ隙にラバンが斬り付けた。この戦法は上手く機能した。まずこちらには弓兵が控えているため、敵も迂闊にはキラ達に近付けない。相手に数の利が有るとはいえ、接近出来なければそれ程脅威ではない。突然現れたキラ達に狼狽える敵兵を、ラバン師団は次々と倒していった。



 みるみる内に敵の一個師団を壊滅させたキラ達は、次の敵師団の背後へと足を向けた。これなら広場の味方と挟み撃ちに出来る。弓矢で傷付いた敵兵をキラは目にも鮮やかな剣裁きで片付けて行った。どうやら先程よりも確実に腕が上がっているようだ。タリルの剣の導きに、キラの体が自然に反応する様になってきたのだ。


「凄いな、キラ。これではたかが村娘と侮れんな!」


ラバンが満足そうに叫ぶ。キラは敵兵の剣を受けながら、


「ええ! 自分でも驚きよ!」


と答え、次の瞬間には相手を切り裂いていた。二つ目の敵師団も残り少なくなった頃である。突然百人程の敵兵の群れが広場に雪崩れ込んできた。



「クソッ! 後もう少しだったのに敵の援軍か!?」


ラバンは急いで散らばっていた師団を集結させた。


「どうするの?」


キラが不安そうな目で敵の一団を見る。その時だ。ラバンの目に、敵の弓兵がキラを狙っているのが映った。


「キラ!」


咄嗟にラバンはキラに飛び付いて覆い被さる。


ドシュッ!


鈍い音がした。


「ラバン! な、何!?」


キラが驚いてラバンの背中を見ると、肩に矢が突き刺さっていた。


「……何でもない」


ラバンが痛みを噛み殺して呻く。


「何でもない訳無いじゃない!」


「いや、致命傷でも無し、この位で……キラ、矢を抜いてくれ」


「分かったわ」


キラは急いで矢に手をかけた。その間、味方の兵達がキラ達を円形に取り囲み矢を剣で防いで防御する。


「盾が有れば良かったわね」


「ああ、そういう部隊も居るんだが、俺達は機動力を重視しているんでな……ッ」


キラが矢を抜くと、肩から血が吹き出した。


「結構深手じゃないの! ど、どうすれば……そうだわ!」


キラは急いで腰に付けたポシェットを探った。中から『ドラゴンの涙』を取り出す。


「何だ、それは?」


「これなら、どんな傷も治るそうよ」


キラはラバンの甲冑に開いた穴から、『ドラゴンの涙』を流し込んだ。

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