伝令
「誰が小僧よ!」
キラは大剣をタリルの剣で受け流した。まともに受けたのでは力負けしてしまう。
「ふん! ネズミめ!」
敵団長は間合いを詰めると、再び大剣の一撃を喰らわそうと大きく身構えた。
「今だわ!」
その動きの止まった一瞬の隙に、キラは突っ込んだ。敵団長の脇腹に剣が刺さる。
「何ぃ~!」
敵団長が思わず傷を庇ったその瞬間、背後からラバンが斬り付けた。
ドゥッ!
派手な音を立てて、敵団長は崩れ落ちた。
「やったわね!」
「そうだな……」
ラバンは言いながら周囲を見回す。数人生き残った敵兵が、命からがら逃げていくのが目に入った。
「よし、ここの敵は片付いたな。キラ、良くやった。正直驚いたよ」
「フフ、それは私もよ」
「フッ。よーし、野郎共! 集合しろ!」
ラバンがそう号令をかけた矢先、一人の伝令が走り込んできた。伝令は息を切らしながら告げた。
「ラバン団長! この先の広場で、味方の一個師団が敵に囲まれて苦戦しております。加勢してやって下さい!」
「双方の数はどのくらいだ?」
「我が方がおよそ五十人、敵は百二十はおります」
「了解した。直ぐに行く。だが、他にも加勢を頼んでくれ」
「はっ!」
伝令は再び走り去った。
「次は広場だな」
「広場だと、上から弓矢での攻撃は出来ないんじゃないかしら?」
「そうだな。よし、弓兵一人に剣士が二人着いて一ユニットにする。ユニット毎に動くんだ。キラは俺のユニットに加われ」
「了解!」
ラバン達はユニットを組むと、広場へ急いだ。
広場からは放射状に路地が配列し、その脇を三階建ての建物が立ち並んでいる。その路地の一角で、建物の陰に身を潜めながら、ラバンは広場を観察した。見方の師団は広場の中央部に陣取って――というより、多勢に無勢、そこへと追い詰められた様だった。周囲を三方向から敵が取り囲み、激しく格闘している。ラバンは建物と広場中央の距離を目測で測った。
「届かん距離じゃないが、命中率は下がるな……やはりユニットで行こう」
「私達が加勢しても、それでも敵の方が多いわ」
「伝令に他の隊からの加勢を頼んである。それに期待するしかないな……よし、皆準備は良いか?」
「何時でも行けますぜ」
「あの敵の一団から片付けるぞ」
ラバンは三つの敵師団の内、一番数の少ない方を指差した。
「相手の方が数が上なら、各個撃破しかない。他の奴等には目をくれるな!」
ラバンの号令と共に、一同は広場へと繰り出した。
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