戦闘

 キラはラバンに着いて走り出した。十字路に敵兵達が待ち受けているのが見える。走りながら、キラは不思議に思っていた。さっきもそうだったが、重い甲冑を着けているというのに、体が軽い。まるで雲の上を走っているようである。


「やはり、マリタさんの魔法の服のお陰かしら?」


キラは独り納得した。



 十字路に再び弓矢の雨が降り注ぐ。敵兵達は慌てて逃げる素振りを見せ始めた。


「良し、今だ! 突っ込め!」


ラバンの雄叫びと共に一団は敵兵目掛けて突進した。敵兵の団長と思われる大男にラバンが斬り込む。咄嗟に部下がラバンの前に立ちはだかった。


「こいつは私にまかせて! ラバンはアイツを!」


キラはそう叫ぶと、部下に向かってタリルの剣を向ける。


「ほら、あんたの相手は私よ!」


ギロリ。


部下はキラを睨み付け、そしてフッと鼻で笑った。


「何だ、小娘。わざわざ死にに来たのか?」


キラは面頬めんぽう越しに、男の冷笑が見える様な気がした。そう脅されると正直自信の無かったキラは軽く身震いする。団長ほどではないにしろ、キラから見ればこいつだって見上げる様な大男だ。



 キラが尻込みしていると、タリルの剣が大きく振動した。その振動に釣られる様に、キラの体が勝手に動く。


「えっ!?」


キラが驚く間もなく、キラの脚は一歩前へと踏み出して、腕は剣を両手で掴み、上段の構えから一気に体重を乗せた一撃を繰り出した。


ビュッ!


空を切り裂く音と共に、剣は胸当てごと男の腹を貫いた。


「グッ!」


男が呻いてガックリ膝を折る。すかさず、キラは男の頚を切り落とした。


「な、何なの!?」


キラは自分のやった事に驚いていた。まさか自分がたったの二振りで重装備の敵を倒すとは!


「……これがタリルの剣の力というわけね」


キラは呟いて、剣に見入った。



「やったな、キラ! だが気を抜くな。敵はまだいるぞ!」


味方の兵が激を飛ばす。その声でキラは我に返った。キラは辺りを見回した。ラバンが敵の団長と斬り合っている。その脇から、ラバンの背後に回り込む敵兵の姿が見えた。キラはまるで風の様に敵兵に向かって走り込むと、そのまま勢いに任せて相手の胴を斬り付けた。


ブシュッ!


激しく血飛沫の吹き出す音がして、敵兵の体が真っ二つに飛び散る。


「なっ、キラか!?」


ラバンが振り向いて、驚きの声を上げた。それはそうだろう。キラだって自分のやった事が信じがたい。


「ヌウッ! 小僧! やったな!」


敵の団長はラバンを突き飛ばすと、キラに向かって大剣を振りかざした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る