援軍
『ドラゴンの涙』は甲冑の穴からラバンの肩へと侵入していった。冷たいが心地の良い感触が傷口に染み込んで行く。すると、みるみる内に肩の矢傷が塞がっていった。
「凄いな。もう治ったみたいだぞ。どういう薬だ?」
ラバンは大きく肩を回して言った。
「これは『ドラゴンの涙』っていう魔法の傷薬よ」
「そんな物何処で手に入れたんだ?」
「レグルのお友達の魔女からもらったのよ」
「魔女か……フフフ、成る程な」
「で、どうするの?」
「うん……」
ラバンは守備をしている兵の肩越しに周囲を見渡した。
「新手の隊列を分断するように突っ込むんだ。他には目をくれずにな」
「それでどうなる訳?」
「分断したら、その分裂した隊に再び突っ込む。何度も分断に次ぐ分断をやるんだ。そうする内に敵の数も減る」
「成る程ね」
「速度が鍵になる。敵を多く倒す事より、隊列を崩す事に集中しろ。よし、行くぞ!」
ラバン達は再びユニットを組むと、新手の軍団の中央に向かって突撃した。まさか少人数で突撃してくるとは思っていなかった敵は、慌ててやたらめったら矢を放つ。キラは飛んでくる矢を剣で凪ぎ払いながら走った。こちらの弓兵も走りながら矢を射る。全てが命中とはいかなかったが、相手の足を止められれば良いのだ。
混乱する敵陣にラバン達は突っ込んだ。
ガチャン!
双方の剣がぶつかる金属音が鳴り響く。ラバンは腕力と脚力にものを言わせて敵にまるで体当たりするかのように斬り付けた。強烈なラバンの突進を受けて、敵兵の体が吹っ飛ぶ。キラは軽い身のこなしで敵兵の攻撃をヒラリとかわすと、間髪入れずに相手の腕を切り落とした。ラバンの師団は皆手練れである。数で勝る相手をものともせずに大河の様な敵の隊列を切り裂いていった。
一気に隊列を突き抜けると、今度はクルリと後ろに向きを変え、再び分裂した隊に突っ込んだ。何度か突撃を繰り返す内に、敵の隊列はバラバラになり、動きの統制が取れなくなって、数を減らした。
「よし、行けそうだな!」
ラバンがそう叫んだ時だ。上空にレグルの姿が見えた。
「遅くなって悪かったな。援軍を連れてきたぞ!」
レグルの背には数十人の兵が乗っていた。ドラゴンの姿を見て慌てふためく敵を尻目に、レグルは広場に降り立ち、兵を降ろす。
「キラ! 生きてるか?」
レグルは大声で叫んだ。
「ええ! 大丈夫よ!」
キラの姿を確認すると、レグルは再び空へと舞い上がった。
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