定休日

 マカララの定休日。朝食を済ませたキラは、今日一日何をして過ごそうか考えた。そうだ、医者にかかるには一体幾ら必要なのだろうか?

 

「ペトラ、医者に診てもらうには、幾らかかるのかしら?」

 

「そうだねえ、最低でも二十万は必要だね。一回診て終わりって訳じゃ無いから、もっとかかるよ」

 

「二十万……」

 

キラは考え込んだ。高い。高すぎる。

 

「医者に会うには何処に行けば良いのか知ってる?」

 

「そうだね、私の知る限りじゃ、ラマーダの丘の高級住宅街に一軒有るね」

 

「詳しく場所を教えて」

 

「中央広場からアケーレ通りを真っ直ぐ行くと、ラマーダの丘があるのさ。丘を道なりに進むと、白くて四角い大きな屋敷がある。そこが医者のいる家だよ」

 

「有り難う。行ってみるわ」

 

 キラは家を出るとラマーダの丘を目指して歩きはじめた。中央広場からアケーレ通りに入る。三階建ての日干し煉瓦の家が建ち並ぶ通りをずっと歩いていくと、坂道に差し掛かった。

 

「これがラマーダの丘ね」

 

今までの日干し煉瓦の家とは違った石造りの豪邸がポツリポツリと建っている。道なりに坂を登りきった所に真っ白な邸宅が見えた。

 

「あれだわ」

 

門を抜け、前庭を通る。二階建ての大きな屋敷は入り口に石の柱で出来たポーチが有った。キラはポーチの階段を登ると、木製の玄関ドアをノックした。

 

「今日は!」

 

しばらくして、ドアが開いた。使用人が顔を出す。

 

「はい」

 

「あの、お医者にお会いしたいのですけど」

 

「こちらへどうぞ」

 

招き入れられて中へ入ると、吹き抜けの広いホールに豪華な革張りのソファーとテーブルがしつらえてあった。壁には大きな森を描いた絵が飾られている。誰の彫像だか知らないが、大理石の人の彫刻が置いてあり、ホールの隅には大きな花瓶に色とりどりの花が生けられていた。

 

「診察ですか? お名前をうかがっても?」

 

使用人は慇懃いんぎんに聞いた。

 

「いいえ。診察の料金の事で相談があるのよ。私はキラと言います」

 

「左様で。旦那様は現在診療中です。しばらくここでお待ちください」

 

そう言うと、使用人は奥へ消えていった。キラは改めてホールを眺めた。こんな豪華な室内を見るのは初めてだ。これだけ裕福な暮らしをしているのなら、貧乏人の診察代くらいまけてくれるかもしれない。

 

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