第9話

「そうか。。。とりあえず葵は絶対そいつと二人で会わないように。

 俺もこれから対策を考えるから、一人で無茶はするなよ」


 仁は葵の話を聞くと、安心させるようにそう言った。


 仁のこの言葉は何よりも心強かったが、相手がどう出て来るかわからないので、やはり不安を拭い去る事は出来なかった。


 そしてその不安は現実のものとなった。


 葵はいつも会社へかなり早めに行って、みんなが出社して来るまで、のんびり過ごすのが好きなので、翌日もいつもの様に早く出社した。


 ところが会社へ着くと同時に、後ろから葵を呼び止める声が聞こえた。

 嫌な予感がしたが、ゆっくり振り向いた。


 直哉が満面の笑みでそこに立っていた。


「どうしたんですか?」


 葵が訪ねると

「仕事行く前に、顔がみたいなと思って。。

 会えるかどうかわからなかったけど、一応来てみて良かった。1時間早く起きた甲斐があったよ。

 少し時間あるね。コーヒーでも飲まない?」


 相変わらず自分勝手で強引だ。


「ごめんなさい。私、やる事があって。。。」


 直哉は少し残念そうな顔になったが、

「今日は仕方ないね。じゃ、また別の日に。これから毎日仕事の前にここに立ち寄る事に決めたから」


 ヤバイ。それは絶対嫌だ。


「ごめんなさい。今日は仕事があってたまたま早く来ただけで、いつもはギリギリの時間に出社してるから、来てくれても会えないと思う。

 じゃ、急ぐので。。。」


 そう言って背中を向けた葵に直哉が慌てて、

「次の日曜日、初めて会った時のショッピングモールの入り口で11時に待ってるから」


 葵は返事もせずにその場を去った。


「葵。おはよう。」


 会社のオフィスに着くと、自分の席に座ったはいいが、全くやる気が出ず、ぼんやりしてる間にもうみんなが出社して来る時間になっていたらしく、仁が葵を見つけると真っ先に声をかけて来た。


「仁。もうちょっと早く来てくれたら良かったのに。。。」


「ごめんごめん。朝は苦手でさ。。」


「あいつ。。会社まで来て待ってたの」


「えっ?それで?」


「コーヒー飲もうとか誘われた。毎朝来るとか言い出したから、今日はたまたま早く来ただけだから、毎日来ても会えないよって言っといた。」

 仁は黙って話を聞いてたが、


「わかった。念のため、俺も明日から早めに会社に来るよ」


「仁。大丈夫?起きれるの?」


「大丈夫。葵の為なら頑張って起きる」


「そう言って寝坊するんでしょ?」

 葵が笑って言うと、

「俺だってやる時はやるよ!絶対早起きする」


 そんな話をしていると、ふいに葵のスマホが鳴って、見るとLINEのメッセージが1件入っていた。


 直哉からだった。


 ー今日、聞くの忘れてたけど、俺が送ったプレゼント、届いてたかな。そろそろ着く筈なんだけど。。ー


 プレゼント?

プレゼントって何だろう。。

 何だかわからないけど、嫌な予感がする。









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