最終話 この気持ちに【名前は…】
はちのは勢いで飛び出した。
先生からの答えは正直分かっていた。
だって今まで私を好きになってくれた人なんて誰もいないもん。
ななみは美術室から出るとはちのを探した
はちのが行きそうな場所と言えば…
「やっぱりここか」
教室だった。
はちのが走っていきそうな場所といえばここ以外思いつかなかった。
勢いそのままで家に帰るほどはちのも考えなしではないとわかっていたからでもある。
「降られたのか?」
わかりきったことをわざわざ聞く。
でもこれは俺だから聞けることで、むしろほかの人間には絶対に聞けないことだ。
「うん。」
「でもわかっていたんだろ?」
「うん。先生のことだから多分そうだろうとは思ってた。」
「昨日先生に相談された。」
「え?!なんて…言ってた?」
気になる。先生のが私のことを話していた内容が気になる。
「困ってたぞ」
「そっ…か…」
やっぱり迷惑だった。そう思われて…
「俺にはもったいないって言ってた。」
「え…?」
「俺みたいなおっさんじゃなくてはちのにもっとお似合いの人が現れるだろうってさ。」
建前。わかってる。でも…
「先生の気持ちが知れただけでも嬉しい。」
「そうか。」
「みー君はなんでここに…?」
「先生から相談されてたからどうなったか気になったんだよ」
「心配してくれたの…?」
「違う意味でな。」
「違う意味?」
「気にするな。独り言だ。」
だってこの気持ちはだれにも明かさない。
はちのは先生のことは諦めるだろう。なぜかすごくホッとする。
なぜ俺はこんなにはちのが降られたことにホッとしてるのか。
わかってはいた。わかっていないふりをしていた。だからこの気持ちに名前を付けたくなかった。でも今回で気づいてしまった。
名前がなかったこの感情に名前があることに気づいてしまった。
「はちの」
「何?みー君?」
「いや…残念だったな。」
「全然残念って顔してないじゃん!!」
「実際結果知ってたからな。」
「ムキーーーーーーーーーー!!!」
はちのはいつものはちのに戻った。
でも俺はいつもの俺に戻れなくなった。
俺の…俺の気持ちになまえはない。
名前はまだない 木暮 @forkey
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。名前はまだないの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます