第9話

部活も終わりに近い時間

美術室にははちのだけがいた。

当然だ。はちのがいる時は基本的に誰もいない時しかいないからだ。

その部室に

「はちのちょっといいか?」

ビクッとなったはちのが振り向くのそこには手紙を持ったいちかがいた。

「な…なんですか…」

「いや…この手紙の事でな?」

「ナ…ナンノ事ですカ?ラブレターなんてダシテナイですヨ?」

カタコトの日本語(?)を喋ってるはちのは知らんふりしてるが、いちかからしたら

「俺はラブレターなんて言ってないぞ?」

「?!?!?!」

墓穴を掘ったはちのを見て笑いを堪えながら

「はちのは俺のどこが良かったんだ?」


「全部です!!!!!!!!」

「全力で言い切ったな〜」

「カッコイイところも優しいところも全部好きです!!!!」

「だが、はちのが見てるこの姿は俺の半分もないぞ?私生活では俺がどういう人間か分からないだろ?」

「先生なら大丈夫です!!!!」

「一体どっからその自信が出てくるのやら…。はちの。」

「はい!!!なんですか!!!!」

キラキラした目ではちのが見つめてる。

「俺の答えはこの手紙を読んだ時から決まっていた。ごめん。俺は生徒とは付き合えない。はちのとは付き合えない。」

はちのの顔が一瞬にして泣きそうになる。

分かっていた。はちのが真っ直ぐな分だけ傷付く事も分かっていた。それでも俺は…

「ごめんな…。」

「ぐすっ…」

走り去っていくはちのを俺は見送ることしか出来なかった。

そりゃそうだ。振った本人が追いかけられるわけが無い。仮にそれが出来たとしても俺はしない。

はちのに俺なんかと付き合うなんて言わず、まともな恋愛をして欲しい。生徒と先生が付き合うなんてものは物語の中だけでしか認められない。

現実で起こると茨の道を進むことになる。


「先生?」

振り向くとそこにはななみがいた。

「先生はちのは?」

「今さっき出て行ったよ。」

「そうですか…てことは振ったんですね?」

「そうだな。」

「そうですか…」

「どうした?何か不都合でもあるのか?」

「いえ…この気持ちは出さないと決めてあるんで大丈夫です。」

「何がどう大丈夫なのかわからんぞー」

「分からなくていいんですよ。俺ははちの追いますね。」

と、微笑みながらななみが出ていった。

「一体なんなんだ…」

解決しない問題が残ってるような心持ちでいちかも戸締りの準備をする。

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