第5話

「先生?居ますかー?」

準備室の扉を開けて呼びかける。


「ん?すまんな、ななみ。」

「いえ、珍しく先生から呼び出されたので。」

「確かに。ななみを呼び出すのは今まで無かったからな。大体ははちのについてきてる事が多かったからな。」

「あれはついて行ってるんじゃなくて『引きずり回されてる』です。」

「ハハハ。お前らすごく仲良いからな。」

「ただの幼馴染で腐れ縁なだけですよ。誰か立ち位置変わってくれるなら譲りたいくらいですよ…」

「そう言うなって。はちのはな、ななみだから一緒にいるんだろうからな?」

「俺だって1人になりたいんですが…」

「まぁ…その辺ははちのと相談してくれ。それで…本題なんだいいか?」


と、神妙な顔つきになった。

これは結構な話か?


「実はだが…はちのから手紙を貰ってな?」

「手紙…?ああ、ラブレターですか?」

「なんだ?知ってたのか?」

「いえなにも。」

「その割には冷静だな?」

「いつもの事なので。」

「そうなのか?」

「毎年誰かにラブレター送ってますよ。」

「ななみは貰ってるのか?」

「小さい時に1度だけ貰いましたね。」

「その時は?」

「『こんなの寄越すなら俺は今後の付き合い方を変えるがいいか?』って脅しをかけました。」

「…お前顔に似合わずエグい事をするよな?」

「はちのだけですよ?」



「もしかして昨日教室で読んでたのってこれですか?」

「そうだよ。かなり動揺したが…まぁ結果相談して正解だったな。」

「俺も謎が解けてスッキリしましたよ。」

「はちのは今日は部活か?」

「そう言ってましたよ。また1人で何か描いてるんじゃないですかね?」

「じゃあこの後は美術室にだな」

「いえ、俺は帰ります。」

「あれ?今日は一緒に帰らないのか?」

ななみがニヤリと笑いながら、

「俺だって1人で帰りますよ。お守りはラブレター貰った先生にお願いします。」

「悪い顔になってるぞ…」

頭を掻きながらどう接するか考えるいちかであった。

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