◆Third 「RESTARTING,”IT”. ~カイシ&サイカイ~」
梅雨のじめじめとした不快感極まりない空気が肌に触れながら、JR小岩駅に向かう。こんなにじめじめとした日に出かけたのはいつぶりだろうか、と思いつつ心に『学校へ行くという不安』を抱える。
やっぱり、仕方ないだろ...あのゲームのためには...
と無理やり自分に言い聞かせる。
――ただやっぱ不安だな...
頭の中で意見が飛び合う。
・・・脳内会議で討論しているうちに、駅に到着した。
そして東京方面の総武線快速に乗車。先ほどの脳内会議しながら揺られること15分。
最初の経由地、東京駅に到着する。
東京駅は相変わらずの人混みで、他人が苦手な俺はすぐに新幹線改札へと移動した。
――こんなに人を見たのは何年ぶりだろうか。
そう考えつつ、名古屋までの切符を購入。
改札に入り、博多行の東海道新幹線、のぞみを待つ。
俺は先の不安を紛らわすために適当にスマホのニュース記事を漁りながら、列車を待った。
10分後、ブレーキ音を立てながらN700aが入線。
自由席の車両に乗車、着席。
お昼の時間のあまり混まない便のためか満員ではなく、簡単に座れた。
N700aは発車し、物凄い加速力であっという間に東京都を抜け、神奈川県に入りどんどん西へと突き進んでいく。
ただ、突き進むと同時に『不安』も心を突いてくる。
――本当に大丈夫なんだろうか?
また同じ不安を残しつつ、俺の行先まで待った。
のぞみは速く、都市と都市を猛スピードで移動し、浜名湖を抜けたと思ったらもう愛知県に到達。
そこからはもっと早く、あっという間に名古屋到着。
降車し、名鉄線に乗るべく、少し離れた名鉄ホームへと向かう。
やはり、人混みだった。
――やっぱり人混みは苦手だな。
そう思うと、人関連で脳内の検索エンジンから昔の出来事と今自分がしようとしていることがマッチしてしまい、想像し、嫌悪が生まれる。
学校に行くこと自体が拒絶反応であり、昔の出来事をどうしても蘇らせてしまう。
もう、行かないつもりだったんだけどな。
嫌悪に包まれないように早めに切り抜けよう、そう思った。
桜通口を目指して、西から東へと駅構内を移動。
――あとは名鉄犬山線急行に乗って、上小田井に行くだけだ。
その時は、”それだけで済む”と思っていた。
【そこからだ。糸が絡まったのは。】
タカシマヤ入り口前の広場を桜通口に向かって歩く。
中央にすごく目立つ時計が、時を刻んでいる。
ベンチなどがあって、少し休憩できそうな場所である。
しかし、
ここを待ち合わせ場所にするリア充の多さには呆れてしまった。
だから早く正面の桜通口に向かった。...はずだった。
その途中、
「嘘...でしょ..?」
斜め後ろ方向から、女の人の、”驚愕”と”恐怖”の声が耳に入る。
知らない人なのにあまりにも耳の中でその言葉が響いたので
どうせ、”何かが壊れた”のだろう、
頭の中でそう思い、脳内の”その声”を振り払い、歩いて進む。
しかし、まだ続きがあった。
「そんな...れい...ゃ」
最後の言葉がよく聞こえなかったが、先ほど同様、女の人の声。
発声元がさっきと同じ距離なので、同じ人...いや、声質が違ったので、連れの女の人...じゃなくて、声帯の高さ的には女の子が言ったようだ。
誰かの名前を声にしたな。最後はよく聞こえなかったな。
距離が少しずつ離れてきているので、最後は周りにかき消されよく聞こえなかった。
と数学的思考が回ったが
――どうでもいい。俺みたいな部外者には関係ないのに、なぜ反応する?
自分の思考が、抑えた。首を周りの人に見えないように振る。
だが。まだ終わらない。
「本物...だよぅ....目つきに顔立ち、体形まで同じ...」
今度は距離が離れているはずなのに、声が聞こえてしまった。
透き通ってしまう声。周りの人の声が聞こえていないようだ。
何かに感動しているのか?
著名人が変装していて、それを発見したのか?
余分な思考の加速。
――何故こんなにも気になってしまう?
自己嫌悪、自己追及を、加速した思考に向かって投げかける。
俺はその声も完全にシャットアウトした。
先に進む。
スタタタタタタタタタタタタタタ...
なんだ...?
靴の音。斜め後ろ。こっち。迫りくる。
その主語と述語と単語が俺の脳をよぎる。
俺がその文字を、脳内で文に変換したときには、もう遅かった。
「れいやぁぁぁぁぁ!!!!」
ドンッッッ!!
後ろから女の子の大きな声と体が何かに押された音。
「え―――」
ドシンッ!!!!
広場の真ん中。人が沢山いる場所で、俺の背中は地面と接し――
女の子に、押し倒されていた。
――状況を、理解不能となった。
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