◆SECOND 「絡まり始めた糸と意図」
「麗夜ちゃああああああん気が付いた?」
―俺をちゃん呼びする人物。母親だ。
優しい母であるが、名前と同時にちゃんを呼ぶのは...やめてほしいと思ってる。
で、なんで母さんが?と、疑問を言おうとしたが、口を開く前にその答えが返ってきた。
「アカウント、凍結させてもらったよおおお」
ハイテンションだから困る。って今、凍結って言った??
ちょっと怒りっぽく俺は声帯を唸らせた。
「どういうことか説明してもらおうかな?」
返事が返ってくる。
「ちょっと麗夜ちゃん。3年間ずっと外に出ずにゲームばっかり。ママちょっと心配になってきたの。」
ぐ...確かに、外に出てなくて心配とは...理由はそれだけなのか?
母親は続けて話す。
「だから、ママね...麗夜ちゃんに課題を出すことにしたの。」
―課題?それだけでいいのか?
一応俺は高校の授業を受けていないが、高校の学習は中1の時に暇だったから全部やって完璧なんだなぁ...俺、自分で言うのもアレだけど、記憶力はいいんだぜ。課題は余裕だ。
俺は口で疑問文を作る。
「課題?何の課題だよ?」
母親の顔がにやり、と怪しげな微笑となる。
そして、突然謎の緊張感に脳が危険信号を送る。
一体、この緊張感は何だ?
危機感を持った身体が冷汗を皮膚から排出する。
母親が一度深呼吸したと思うと、緊張感の正体が曝さらけ出された。
「麗夜ちゃんに、名古屋に行ってもらおうと思いまーす!!(≧▽≦)」
「...は??」
心の声が俺の部屋に響いた。
焦る。ちょっとどういうことだよッ!!
「ちょ、ちょっと。どうして俺が名古屋に行くんだ?」
母親がきょとんとした感じで返す。
「え?凍結を戻してほしいんじゃないの??」
...そんな事初耳だよ...って今凍結を戻すって言った?
「よし行くわ。」
くそ正直な気持ちを即答。
準備準備~♪と咄嗟に準備にかかる俺を母親が遮る。
「あ、ちょっと待った。あの姉妹校の留学だから、一か月間あっちの学校に行かないといけないよぉ」
頭が割れる言葉である。
が、学校だとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
「ちょ、ちょ...学校って...行きたくないんですが...」
母親の前髪の下に影ができて怖い顔となって
「じゃ、アカウント削除ね♪」
「ちょ、それだけは勘弁してくださいお願いします学校行きますから」
渋々、学校行きを決意した俺。
準備はしてあると母親が言って、廊下を指をさしたので見るとスーツケースがあった。そしてお金が渡された。往復の交通費らしい。
「生活費は通帳で何とかしてね♪」とか言われてテキトーに渡された。
住所は名古屋市西区のあたりらしい。(もらったメモ帳に記してあった)
一軒家という事に驚いた。実家の別荘らしい。
そんなところ、初耳だけどな。
色々と疑問が残るが、グーグルマップを見てちゃんとしっかりとした家を確認した。
上小田井駅ってところが最寄駅みたいだな...と最寄駅確認
・・・というか、なんか前々からこのことが決まっていたみたいに思えた。
玄関に来た。
そして靴を履く。新しい靴のようだ。
この新しい靴でどんな足音を踏むのかがほんの少し楽しみになると同時に3年前の出来事が脳裏に浮かぶ。
いや。1か月間の我慢だ。と首を振って、自分を
ドアノブを少し震えながら押す。
ガチャ...キィィーという音が聞こえ、
外から目が開かなくなるぐらいの日光が降り注ぐ。
梅雨なので、少し湿った雨の香りがほんのりと香った。
一歩進む。もう一歩。
母親の声を後ろに
俺はゲームを取り戻すためだけに、名古屋へと向かった。
―これが全ての糸に俺が絡まるきっかけであることを、今の俺は知る由もなかった。
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