◆First 「捨てられた意識と消失」

俺のこと自分で自己紹介すると


神崎麗夜かんざきれいや、十七歳。”今は”落ちこぼれの高校2年生である。

何故”今は”落ちこぼれかというと、14歳の中学2年生の時。

落ちこぼれる前は天才で、スポーツできて、部活もいいし、生活態度はクソ真面目だった。(ただし、陰キャ)

勉強せずとも、難関高校に行けるレベルだった。

ちなみに学校は難関な中高一貫の学校で、エスカレーター式の学校である。




しかし、充実って続かない”モノ”なんだなぁ、って思わされた、出来事がある。




スクールカースト2位の煩い陽キャたちに何故か恨みを買われたらしく、

やってもない悪いことを、放課後に動画を撮られながら告白させられ、動画を学校中に拡散されて一気に叩かれる対象へと変わってしまった。


俺の担任もこの事情を把握済みで、唯一の俺の味方だったが


ある日、不審な死を遂げたそうだ。-何故だ。


新担任は俺の事情を知らない無知な新人で、態度が最悪だった。俺のことに見向きもしない。

庇われる人が居なくなって、嫌がらせがどんどん悪化して、とうとう暴力を振るわれるようになった。俺の友達は去って行って、叩かれるのを回避したようだ。




もう嫌になった。




そして案の定心の潤いが枯渇し、不登校になった。


親が教育委員に連絡したらしいが、何故か返事はない。


俺は人を信頼する気持ちを、そこで全て失った。




生きる意味を失った、


そう思った時。




そこで出会ったのが『CROSS GUNNER』という〈VRMMOFPSゲーム〉だった。


パソコンでログインしてから、パソコンと専用機を有線で繋げ、パソコンの出力で専用機に映像を映し出し、そして専用機を自分の頭にのせる。


そしてベットで寝てから専用機と頭を吸盤の付いたコードで繋ぐと


意識が現実世界からパソコンの世界の中へと移行する。-素晴らしいゲームだ。


脳が指定したように動くという、未来の進歩を感じるゲーム。


出会ったきっかけは、小さいころに何故か銃を扱えるようにアメリカで習っていて、使いこなせるようになったが、突然射撃の習い事が打ち切りに。-そりゃそうだ。違法だったからな。


それを思い出して、もう一度銃を射撃したかったので探してみたらトップにこのゲームがあった。




たちまちハマっていき、今や一日に12時間連続オンラインという最早病気のレベルまで来ていた。




そして、初めて2か月でお金をカンスト。


初めて3か月後にはゲーム内最強の称号〈貫通銃士〉という物も手にして、時々オンライン上で行われる大会にも出場。そして単独優勝。-単独ってのが悲しいなぁ...


そして皆には『銃士元帥』と呼ばれ、


修行依頼、某投稿サイト投稿主にタイマンを挑まれるが面倒なのですべて断っている。


俺がここまで強くなれたのは、不本意ながらも不登校と子供の時の射撃の知識と休まずにゲームを進めた努力であると思ってる。




残酷な現実世界の生活を忘れ、ゲームという新たな次元でストレスを解消しまくってた。


俺の中では充実していた。


しかし、また充実は安定しない。




―それが今。この6月19日午前8時2分38秒、東京都葛飾区一軒家二階の一室の様子だ。




俺は今、ピンチである。




暗闇の中、唯一白く光る一つのパソコン。

カーテンの隙間からは、外からの目が拒絶するほどまぶしい光が少し見えている。

そんな朝の俺の部屋には、ただ茫然と立ってる俺の姿。




「そんな...嘘だろ!?」




嗚咽を吐くかのように、少しかすれた声を俺は発す。

俺の目線上には、光を発している一つのパソコンと文字しかない。

開いているアプリケーションが文字で告げている。




【あなたのアカウントは一時的に使用停止とさせていただきました。 →詳細 】




そんなバカなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!

俺がなにしたって言うんだ!!ただ普通にゲームしただけだろ!!

全試合MVP取っただけなのに...


なのに何故...何故なんだ...


俺は目の前の悲劇(俺から見た)に絶望しているのだ。




ふと気づく。




「この〈→詳細〉ってなんだ?」




絶望と期待を胸にマウスを動かしてクリック。

すると、公式サイトに飛んで、【このアカウントの停止について】というところへ移動した。


こう書いてあった。




【このアカウントは、”保護者の管理権限”に基づき、保護者がアカウント一時停止申請を申請いたしましたので、アカウントが凍結されました。】




―”保護者の権利権限?”




保護者の管理権限なんて指定してないぞ?

一体、なんで...


―保護者の管理権限とは、分かってる通り、保護者が子供のプレイ時間の管理に使う機能だ。




「くっそおおおおおおおおおおお!!」




朝から近所迷惑だが、喉がかすれて痛くなるぐらい叫ぶと、何やら一階から階段を上る音が聞こえる。

そして足音が自分の部屋の前に止まったかと思うと、バタンッ!!と大きな音を出して俺の部屋の扉が開かれた。

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