絶体絶命、魔王の降臨

「よし、先頭の雑魚は倒した!」

「まだまだウォーミングアップにもならないな!」

「油断大敵、です⋯⋯戦いはまだ始まってすらいません」


 さらっととんでもないことを言う仲間たち。その中で一人、勇者は震えている。仲間たちが思っていた百倍は強くなったのだ。無理はない。そして、もう一人震えている者が敵陣に。


(勇者たちTUEEEEEEEEEEEEE――――!!!!!!!!!!)


 魔王の側近、オエールである。


「むむ、あのメガネの魔力がずば抜けています」

「よし、こののボスだな」

。ぶちかますぞ!」


 そして、なまじ強力なためにあっという間に見つかった。


「極光連座」

「右ストレート!」

「次元烈弾!」


「ま゛お゛お゛さ ま゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」


 側近を倒した!

 ついでに百万の魔王軍が全滅した!



「あの、みんな強くなったんだね⋯⋯」


 ツヨシが遠慮がちに口を開く。


「「「約束のため、強くなった!」」」


 ツヨシは乾いた笑いを浮かべた。


「ツヨシもまだまだ温存する気なんて、慎重なんだな」

「雑魚は俺たちに任せやがれ」

「魔王への道、切り開いてみせます」


 純粋な視線が恐ろしい。ツヨシは申し訳なさと気まずさでいっぱいになった。同時に、今までの鍛錬はなんだったのだろうとやるせない気持ちになる。実力にかまけずに鍛錬に打ち込んだつもりだったが、自分だけ怠けてしまったような、そんな後ろめたさに胸がいっぱいになる。

 だが、戦況は待ってくれない。空が暗黒に染まり、圧倒的な魔力に大地が震える。


「来た――――!」


 ツヨシは本能を口から吐いた。勇者としての直感があった。天から漆黒の巨人が降り立つ。南南北の御神塔よりも遥かに大きい。勇者パーティ一同は、息をのんだ。

 魔王が、降臨した。


「あれが、魔王⋯⋯⋯⋯」

「ついに来ましたか」

「ツヨシ、出番だぜ」

「ああ、俺なんだね⋯⋯うん⋯⋯頑張るよ⋯⋯⋯⋯」


 ツヨシは、魔王の前に立った。


「余は大魔王マオーン。配下たちの仇は討たせてもらう」

「あ、うん。討てるのならやってみぃぃぃぃいああ――――⋯⋯」


 投げやりに答えるツヨシが、魔王の呼気で吹き飛ばされる。魔族の頂点の肺活量は、ちっぽけな人間ごときを塵のごとく吹き飛ばす。


「ツヨシ!? てめえ!!」

「卑怯な手を使いやがって!」

「勇者さまがあなたなどに負けるはずがありません!」


 仲間たちは、一斉に飛び出した。

 だが、しかし。

 ツヨシは信じられないものを見た。



「「「魔王TUEEEEEEEEEEEEE――――!!!!!!!!!!」」」



 腕の一振りで瞬殺される仲間たち。ツヨシは絶句した。なんだこれは。何が起こっている。倒れた仲間たちを気遣う間もなく、呆然とする。


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯え?」


「ツヨシ、後は託した⋯⋯!」

「負けんじゃ、ねえぞ⋯⋯!」

「ツヨシ、くん、すき⋯⋯!」


「来い、勇者。一騎打ちである」



『大魔王マオーン』

体力:9999億

攻撃:829億

防御:157億

魔力:999億

俊敏:523億



「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ええぇ?」

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