悪鬼集結、魔王軍の挙兵

 時を戻そう。

 魔族領。暗黒渦巻く空模様は、混沌の世界を暗示していた。


「戻りましたぜあ゛ぁ゛ん!?」

「ご苦労」


 モヒカンを出迎えたのは、フォーマルスーツとメガネでキチッと固めた女悪魔。


「しっかし、あのまま侵攻していたら全部済んだんじゃねえですかい?」

「私の一存に、なにか?」

「お゛ぉ゛う!? ねえねえ文句なんてねえって!!」


 焦ったようにモヒカーンが姿勢を正した。


「よろしい。此度は、龍界の征覇を完遂した祝宴の席。久々に四天王の皆さんの顔合わせ」


 モヒカーンが周囲を見渡す。見知った魔族が、三人。



「あらん、怯えちゃってかあいーねん♪」


『水の四天王、セイレーン』

体力:32891

攻撃:2231

防御:2524

魔力:9999

俊敏:9024



「マオウサマ、ゴゼン。レイギ、タダシク」


『土の四天王、セガターン』

体力:99999

攻撃:5197

防御:9999

魔力:1752

俊敏:1027



「ふん、雑魚どもが調子に乗りおって」


『雷の四天王、カミナーリ』

体力:82570

攻撃:9999

防御:1372

魔力:8215

俊敏:9999



 モヒカーンは大人しく席に着いた。魔王軍四天王、壮々たる顔ぶれだった。中央の女悪魔が一瞥すると、四天王は黙って居住まいを正す。


「龍界への侵略戦争は激戦。全員の無事は奇跡。だが、木端役に任せた人間界侵攻が滞っているのは報告の通り」

「⋯⋯龍神連中に比べたら雑魚の集まりだったぜい」

「だが、奴らめには憎っくき女神が味方をしている。あやつが選定した勇者とやらは脅威足りうる。警戒は必要だ」


 斥候の役目を果たしたモヒカーンが報告する。龍に比べて、人間は惰弱。そんな分かり切った報告に、場が静まり返る。それだけ女神という存在は脅威だった。


「然るのち、総攻撃を開始。指揮は私が執る」


 カツン、とハイヒールが音を鳴らす。


「よろしいでしょうか――――魔王様」

「よい」


 膨れ上がる膨大な気配に、その場の全員がかしずいた。


「では、作戦は追って通達」



『魔王の側近、オエール』

体力:99999

攻撃:9999

防御:9999

魔力:9999

俊敏:9999



「通達後――――人間界への侵攻を開始する」

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