神の愛娘、奇跡の敗北を示す

 時は戻り、西の王国。教会の総本山があり、対魔王軍戦線の最前線でもある。


「聖女様、お願いします」


 無言で頷く、白い少女。奏でる祝詞は奇跡を呼び起こし、蠢く魔獣どもがまとめて浄化されていく。感嘆の声を上げる僧兵たち。こんな奇跡を目前に出来るのならば、最前線も悪くない。



『奇跡の聖女』

体力:1111

攻撃:333

防御:999

魔力:999

俊敏:333



「かのものどもに――――神の祝福を」


 千に及ぶ魔獣の集団が、ものの数秒で。浄化され、灰塵として世界に溶けていく魔獣を、憂いのこもった視線で見つめる。


「なにゆえ、むえきなたたかいを⋯⋯⋯⋯」


 争いが、なにを生むのか。諸悪の根源たる魔王の存在を先に見据える。

 そして。


「あ゛ぁ゛ん!? 何十年経っても侵攻完了の報告がないから見に来りゃあ、愉快なことになってやがるぜ! ヒャッハー!!」


 二メートル近い巨体。肩に担ぐのはそんな巨体にも負けていない戦斧。そして頭上に燃え盛る炎のモヒカン。有象無象の魔獣どもとは一線を画している。聖女は光の翼を広げた。


「なのりなさい」

「魔王様直属四天王が一。それで十分だろおがあ゛ぁ゛ん!?」


 ネームド。しかも大物だ。聖女の周囲に浮かぶ無数の光の矢。世界に住まう精霊たちの励起を感じる。


「あれは――――聖女様のホワイト・シャイニング!!」


 僧兵の一人が叫んだ。


「西の魔窟に住まう魔神ゴルゴン=ゾーラを一撃で粉砕した聖女様の奥の手だぜ! 無数の光の矢で悪しき魔力を縫い付けて、光の翼で抱擁する必殺技だ! 俺もあのぷるぷるの二の腕に抱き締められてええ!!」


 四天王は、攻撃を避けることすら出来なかった。聖女の右手が奇跡を振りかざすのと同時、ほぼノータイムで攻撃が殺到したのだ。


「「「「やったか!!?」」」」


 僧兵の皆さんが身を乗り出す。

 しかし。



「あの⋯⋯痛いンすけどぉ?」



 全身に光の矢が刺さり、頭部には光の翼が叩きつけられている。追撃に頭をぺちぺち叩かれているが、全く効いている様子は無かった。四天王のモヒカンが息むと、矢と翼が炎上する。


「きゃあああああああああああ――――!!!!!!!」


 聖女が悲鳴を上げた。業火が聖女を焼いている。その悲痛な声に、僧兵たちはようやく気付いた。思い知らされた。

 ここは――人魔戦争の最前線なのだ。


「んじゃ、


 直後、僧兵千人が蒸発した。



『火の四天王、モヒカーン』

体力:92116

攻撃:9231

防御:2524

魔力:8702

俊敏:1924

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る