第20話 新たなる主従
全てを話してみた
青龍のこと 籠手のこと フィルのそれは呪いなどではないこと 巫女と呼ばれていたこと
その力のこと
「青龍の巫女? 聞いたこともないのじゃ」
「うん 俺もさっぱりなんだ」
ただ俺が異世界出身ということだけは伝えていない これだけは言えない
もし言ってしまったらフィルは俺を元の世界に戻そうとするのでは?
あるいはなにか責任を感じるのでは?
そんな考えが浮かんだらもうダメだった
「なるほど そんなことが・・・あったのか
しかし わらわの屋敷にそんなものがあったとは」
「えっ?フィルも知らなかったのか」
「うむ てゆうか哲人 その籠手どこから持ってきたのじゃ?」
「・・・どこだっけ?」
全くわからないそうえば朝起きた時に付けられていたがどうやってこれを見つけたか
憶えていていない
「哲人・・・」
ポツリとフィルが零すように言葉を発した
雰囲気がちがう 真面目な話だ
「答えは出たか? ・・・」
しかし出なかったのだ
どうしようもなく俺は出せなかった
ウジウジと悩んでばかりだ
今も悩んでいる
「ごめん わからない」
「そうか・・・ 」
その声音は初めからわかっていたような
だけどどうしようもない寂しさを孕んでいた
胸が痛い
「ならば 哲人 わらわから言わせてほしい」
フィルは立ち上がり
左手をこちらに差し出してきた
「好きなのじゃ わらわの
呆然とした
なにも言えなかった
完全に不意打ちだ
てゆうか・・・好き?
「え えっと その好「違う!」へ?」
いきなり割って入られた
「大好きなのじゃ!」
「・・・」
今度こそなにも言えない
けど 鼓動が早くなってくるのも事実で
なんだろうこの感覚 これまで味わったことない感覚だ
ここで 俺も好き なんていうのは簡単だ
訂正 簡単じゃない・・・けど
ここで好きなんて言ってもこれが俺の思いなのかはわからない
でも言ったほうがいいのでは?
たとえ今好きじゃなくても いずれ
「哲人 わらわのことが好きなんて言ってくれるなよ まだ」
「!」
「哲人の気持ちがまだはっきりしないことはわかっておる だからその答えを焦る必要はない わらわが聞きたいのは
好き嫌いに関係なく」
「言っておくが わらわの
嫌なことなども泣きたくなるようなことも数えるのが面倒なほどある 茨の道なのじゃ」
「だが それでも 傷つきながらでも血を流しながらでも わらわの隣を歩いてくれるか?」
どうして俺なんかをが本音だった
俺なんてたまたま得た力でたまたま英雄扱いされているだけだ
なによりも疑問なのが
「どうして 俺を
少女は目に覚悟を宿し
高らかに世界を変える宣言をした
「わらわが皇帝になりたいからじゃ!」
その一言 フィルのことは浅はかながらわかっている 今の現状も
「なんで皇帝になりたいの?」
「無論 わらわが生きにくいからなのじゃ!」
帝国の今後を憂いて皇帝になるわけじゃない
帝国の問題を解決したくて皇帝になるわけじゃない
大樹界を消したくて皇帝になるわけじゃない
おおよそ一般人にはない発想
自分のために皇帝になりたいと考えるなど 暴君もいいところだろう
けどこの少女の宣言が少年はカッコよく映った 凄まじく自分勝手だ けど
「ははっ あははははははっ」
「哲人?なぜ笑う?」
「うん 凄いよフィル 自分のために皇帝になりたいだなんて うん さすがそれでこそフィルだね」
「・・・引き受けてくれるのか?
引き受けてくれるなら左手の甲にキスを」
差し伸ばされた左手をとり
顔を近づける 細く白い手
少しでも力を入れれば折れそうな手
シミの1つもない芸術作品のような美しさ
触れるように唇を当て
「ぁっ」
「黒鉄哲人はフィルメニア フォン リードルフ第二皇女殿下の
ここに新たな主従な1つ 誕生した
風に煽られブルースターが揺れる
そのブルースターの下に
小さくだがたしかに
もう一輪のブルースターが咲いていた
・・・
「うーむ しかし 主従にはなれても恋人にはなれないか ふむ」
「いや その・・・ わからなくてね」
さっきの雰囲気はどこへやら普通に会話している二人 そしてこんなときに飛んでくる質問は古今東西決まっている
「哲人 これまでお主恋人は「いません! 年齢=彼女いない歴です」・・・なんか ごめんなのじゃ」
謝られた しかもガチ
「フィルはいたことあるの?」
「・・・それは 嫌がらせか?」
「ごめんなさい 浅はかでした」
確かにフィルは作りたくてもできなかっだろう 弁解になるかはわからないが
「いや 俺には親がいなくて その感情に疎いというか これが恋人いないことと関係しているのかわからないけど」
「・・・そうか さてこの話は置いておくとして クズノハは今 お使い中かの?
哲人を連れてきた後 アルフに使いを頼まれていたはずなのじゃ」
「気づいてたの? クズノハが案内してくれたこと?」
「ここを知っているのはクズノハとわらわだけなのじゃ よし哲人 耳を貸せ」
新たなる主従は早速可愛い妹のために行動を開始する
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます