第5話 蒼眼と英雄の資格
大樹界---
この世界の南から発生した謎の現象であり黒樹とよばれる木から発せられる謎の胞子が魔獣と呼ばれる獣を生み出し、その魔獣によって田畑はあれされ人々は襲われその地は今度は魔獣が胞子をまき散らし、黒樹が育ちまた魔獣が生まれと人が住む土地がなくなっていく現象。
その結果この世界の南方はほとんど住むことができなくなってしまった。
大樹界はもの凄い勢いで世界を侵食しこのままでは世界そのものが大樹界になってしまうと言われている。帝国では一部の人間から青龍の復讐であると言われているとか。
・・・
食事が終わった。
あてがわれた部屋のベットで、程よい空腹感とどうしようもないムカムカした思いを抱えていた。
天井を見ながらあの食堂で聞いた話を思い返す。
青龍か……。
別にフィルが悪いことをしたとかではなく伝説によってフィルは苦しめられている。
おれにはどうしようないのだろうか、無理だろうと即座にその考えを切り捨てた。
おれは平凡な少年なのだ、どうにかなんてできるわけがないだろう。
むりだ、俺は端役 主役になんかなれはしないのだ。
ずっとそうだ、きっとこれからも。
それでも、あの裏路地で震える少女の姿 が頭から離れなかった。
――みんなの英雄なんて贅沢言わないから
裏路地で震える少女の
微睡に落ちる寸前そんなことを考えた哲人だった
・・・
-おい-
-おい-
「んん?」
-おい-
「なんだ?」
-英雄になりたくないか?-
どこからともなく聞こえたその声は微睡にいた哲人をゆっくりと起こした。
その声は男でも女のでもない声、自分のもっている語彙力では説明できない声だ。
「て ゆうか だれだ?」
-それを知りたくばまずは起きろ そして廊下に出るのだ-
「ああ? うーん」
この時、哲人の意識はほとんどなくただなんとなく声に従い体を動かした。
-そのまま地下室へ向かえ-
「ぅうん?」
地下室の場所とかわからないがなんとなく体が動くほうへ従った。
気付けば石でできた階段を下っており目の前に木でできた扉が見える。
その扉の隙間からは蒼い光を放っていた。
なぜか、扉の鍵は開いていた。
扉を開けてみれば、蒼く光り輝く一対の籠手がそんざいした。
ここで哲人は気付いた。
この籠手から声が聞こえるのだ。
-英雄になりたくないか?-
「おれには 不相応だ・・・」
-ほう ではあの子はあのままでいいのか? 数千年前の伝説に苦しめられているあの少女はあのままでいいのか?-
「それは・・・いいわけないだろう だってあんなにいい子がなんで無条件で虐げられたり 怖がられたりしなくちゃならないんだ?
おかしいだろう」
-それは なぜ?-
「わけもわからない伝説のせいだ」
-ならば 伝説を塗り替えたくはないか?-
「できるのか? 俺なんかに?」
-ははっ 面白いことを言うなっ これはお前にしかできないっ-
「おれにしか?」
-伝説を塗り替えるのはいつだって英雄たちだ
さておまえはなぜ 伝説を塗り替える?-
「フィルが・・・震えて泣かなくてもいい世界を作りたい
フィルがあんな耳飾りをつけなくも大手をふって街を歩ける世界にしたい」
-ならば この籠手を手にはめろっ ここからお前の伝説は始まるっ―
その瞬間 哲人の意識はとんだ
「ふふっ やはり人間の体いい む?これは・・・ははっ こいつやはりそうか
まだ一つだが 視えるぞっ どうやら雑兵が紛れ込んだらしいな
肩ならしにはちょうどいい」
哲人の口で哲人の声で哲人の体で哲人ではない何かが声をだす
「では いくとしようか」
・・・
男はある任務を請け負いこの屋敷に侵入していた。
その任務とはフィルメニア第三皇女の暗殺であった。
案外、あっさりと侵入できた男はそのまま皇女が眠る部屋を目指す。
途中で見つけたやつはころしてもよいと許可されていた。
「ああ 獣人族のガキか?」
寝間着姿の獣人の少女がぬいぐるみをだいて歩いていた。
「すまねぇな」
男はぽつりとつぶやき、ナイフを握りしめる。
一瞬で間合いを詰めるせめて苦しまぬよう悲鳴も上げられぬように一撃で、首と胴体が永遠に分かれることに……。
しかし、その必勝の一撃は肉を絶つ音ではなく。
「ふぇ?」
鉄同士ぶつかり合う音によって阻まれた。
「なにっ!」
男は慌てて距離をとった。
この一撃を阻んだ相手を見据える。
「お おにいちゃん?」
クズノハはこの時、直感的にめのまえに立つ この少年が自分が好きないつもの少年でないことが分かった。
「あ あなたは一体? 誰?」
少年の声で少年の口で少年の体で少年ではない別の何かが答える。
「ほう なかなか鋭いわっぱよな 安心せいこのものに危害は加えんよ
お前はあの執事を呼びに行け こやつなかなかに手ごわい故な」
「はい・・・待っててお兄ちゃん」
少女は走っていった廊下には二人の男が残った、男は目の前の少年をにらみ考える
なぜ自分の姿が見えていのかと。
透明化しているはずの自分が見えているのか。
「おまえは俺がみえるのかっ?」
「当然よな まぁ 今のままでは100パーセントの力はとてもだせんが」
「そうか ならば 死ねぇ」
手加減できる相手ではない。
それを悟った男は必勝の手札を切る。
「
この世界から一切の存在を消す魔法、これを感知できるものなどそうはいない。
たとえ帝国の
その自負があった。
当然その技は少年の首から紅いシャワーを降らせることになる。
はずだった。
その技は。
「
少年の籠手によって、あっさりと防がれた
この名も知らぬただの少年に。
いや少年ではない、漂う風格が違う
混乱の最中 男の腹に少年の拳がめり込んだ。
「っっ おまえはいったい・・・」
その言葉を最後に男の意識を手放した。
「全く 妙な話が出回っていると思ったら歴史とは恐ろしいものよな
つばさがないから嫉妬に狂ったなど・・・ばかばかしい
翼などいらない翼を使い空から見上げずともこの眼ですべてわかる
まぁ さすがに限界か・・・励めよ少年 」
それを最後に哲人の体は糸のきれた人形のように崩れ落ちた。
・・・
太陽が東の空から登り始めたとき黒鉄哲人の意識は覚醒した。
昨夜は変な夢を見たなと思いながら体をうごかそうとしたとき、ジャラジャラと音が鳴る。
「あれ?動かない」
しばらくして音の正体に気付いた。
よく見たら拘束具で四肢を拘束されている。
「なんじゃ こりぁっ」
しばらくすると扉が開かれアルフが入ってくる。
「おはようございます 哲人様 では話していただきましょう昨夜 何があったか?」
それをいわれても哲人にはなんのことかまるで分らなかった。
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