第4話 九大神龍伝説

16歳の少年が14にも満たない少女を押し倒している、この現場をみたら誰もがまず警察をよぶだろう。

もしくは烈火のごとく怒りくるうかである。

哲人は感じる、これはヤバいと嫌な汗が浮き上がる、絶対に怒られる、しかし少女の反応は予想していたものとは異なった。 


「はぁ 事情を説明せよ クズノハ」


「はっ はい」


冷静に事情を説明させた。

クズノハは必死に説明しフィルは納得したようだった。


「なるほど 事情は相分かった クズノハ 哲人は確かに親しみやすいが場と立場をわきまえよ 哲人はあくまで客人なのじゃ クズノハがまだまだメイドとしても年齢的にも未成熟なのもわかるし頑張ってもいるのはわらわも承知じゃ だがあまり気を緩めすぎるな よいか?」


「はっ はい」


「ああ そうえば わらわの部屋の掃除をしてくれたそうじゃな 綺麗になっていたのじゃ ありがとうなのじゃ クズノハ」


「い いえっ そんなことはメイドして当然のことをしたまです」


「哲人」


「はいっ 」


「まずは謝罪を 我が家のメイドが失礼をした これはわらわの責任じゃ どうか許してほしい」


フィルは真摯に頭を下げた。

その態度はとても同い年の少女とは思えないほどに大人びている。


「い いやっ 悪いのはほとんど俺だしクズノハさんは悪くないよ 頭を上げてフィル」


「そうか そういってくれると助かる そのうえでお願いをしたい 今後あまり誤解を受けるような行いは慎んでくれ 今回は間違いはなかったが・・・

もしクズノハが傷つくようなことになったらわらわは哲人が相手でも憲兵につき渡さなければならない そんなことはしたくないのじゃ・・・」


「ご ごめん その新しいものばかりで浮かれてしまったんだ 誤解を生むような真似をして申し訳ない クズノハさんもごめん 怖かったよね 申し訳ない」


「いっ いえ そんなわたしこそっ「はいっ そこまでなのじゃっ」・・・」


「さて 目の前の料理を楽しもうぞ あれ さめているのじゃ アルフ」


「はっ」


アルフさんが指を鳴らすと冷めていた料理からまた湯気が立ち昇った。

どんな魔法を使ったのだろうか……。


「うむっ! さすがアルフなのじゃ クズノハもアルフも席につくのじゃ

 では ---木よ 風よ 大地よ」


手を組み、目をつむってフィルがつぶやき始めるそれになろうアルフとクズノハ。

その動作を慌ててまねる。


「それじゃ 哲人もいただくのじゃ アルフの料理は相当なものなのじゃ」


目の前の中央にある皿、サラダだろうか、特に変わった様子もなく。

フォークもスプーンも用意されている。

世界が違ってもこの辺は変わらないのだろうか、一口口に含む。


「む・・・ うまいっ」


「うむ 今日も良い出来なのじゃ アルフ」


「光栄です お嬢様」


「そうえば フィルのってどういう立場なの? お嬢様って言われてるし

もしかしていいとこのお嬢さん的な」


その言葉を発した瞬間 静寂がその場を支配した。

老執事が驚き言葉を紡ぐ。


「哲人様は ご存知ないですか?」


「え あ はい」


「・・・お嬢様 」


「良い アルフ そうじゃな これはわらわが名乗るべきなのじゃ 

わらわの名は フィルメニア 

フィルメニア フォン リードルフ 

この国 

リードルフ帝国の第ニ皇女なのじゃ 

まぁ事実上はいないも同然なのじゃが」


まじか……実はおれとんでもない子に会ってしまったのか。


・・・


九大神龍伝説

むかし むかし あるところにじゅうひきのりゅうがいました

じゅうひきの りゅうたちは りゅうとかいわできる にんげんのいちぞく とあるけいやくをかわしました

そのけいやくはともに あれはてたち をゆたかにしていこうというものでした

そのじゅうひきのりゅうたちは 

ばはむーと 

よるむんがんど 

ふぁふに―る

にーずへっぐ

りんどぶるむ

くくるかん

あんぴぷてら

こかとりす

てゅぽーん

せいりゅう

とよばれました じゅうひきのりゅう とそのいちぞくのにんげん は ちからをあわせて こうや を ゆたかなとち にしていきました 

そして りーどるふていこく という くに ができました

その ていこく は じゅうひきのりゅう と したしく またそれによっておおきくなったので じゅうりゅうていこく とよばれました

りゅうたちは おおぞらをじざいにかけまわことが できました

いっぴきだけ つばさがなく おおざらをとべないりゅう がそんざいしました 

それが せいりゅう です

じぶんがとべないことに いかった せいりゅう は しっと にくるいていこくをほろぼそうとしましたが ほかの きゅうひきのりゅう によってころされてしまいました せいりゅうはころされましたが 

せいりゅうのけいやくはのこり それはのろいとなってしまいました

きゅうひきのりゅうのからだは ぶき となり

きゅうひきのりゅうの たましい はていこくのたみにひきつがれました

いまでも きゅうひきのりゅう は ていこく をみまもっています


とある吟遊詩人より『九大神龍伝説』。


・・・


「という話があるのじゃ」


フィルはその物語をどこか悲しげに語ってくれた、もしかせずとも原因は明白だった。


「えっと その青龍の呪いっていうのは……」


「うむ 哲人がみた あの姿なのじゃ 翼はなかったであろう」


「えっと その うん」


「つい さいきんまでは青龍の呪いなど存在しないと言われていたがわらわがせいりゅうそっくりの特徴をもってしまったので呪いだと言われわらわは忌み子扱いされることとなり この辺境の地で育つこととなった まぁあれが出現した時期でもあるしタイミングも最悪だったのじゃ 仕方ないのじゃ」


「あれって?」


「哲人 ほんとに知らぬのか?」


フィルが信じられないという顔でこちらを見ている


「えっと うん」


「大樹界 今この世界を脅かしている 謎の現象なのじゃ」


「今や その原因がお嬢様にあると決めつけ殺しにかかる輩もいますからな」



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