第4話 美しく見えるセカイ

 天は凄まじい勢いで成長を遂げていた。

 日々繰り返される修行ではノノとソミナのコンビ相手に対等に渡り合っていた。


 ノノに一度勝った天は次の段階を踏んでいた。それは自らに魔力を注ぎ込むこと。


 だが―――


「俺に魔力なんてないんだろ?」


 魔力のない異世界者の天がアメリに言った言葉だ。

 その言葉にアメリは笑顔でこう返した。


「天君にはリンダちゃんがいるでしょ?」


 自らが契約した精霊と共に戦うこと。それは精霊使いのソミナからの助言でもあった。


     ◇



「―――ソミナっ!」


「大丈夫です。それよりも追い詰められています。この短期間でここまで成長するとは予想外ですね」


「リンダちゃんのおかげかな?」


「それもありますけど……。おそらくはヒューズナイト様との修行の成果が表れ始めているのではないでしょうか?」


「どっちにしてもこのままじゃヤバいってことだね?」


「そうですね。ノノさんは動きを封じてください。彼を閉じ込めましょう」


「おっけーっ!」


 ノノは天の周りに結界を張った。結界はもともと魔力のバリアみたいなものである。だが、ノノはその結界にスパイスを加える。それは重力だ。その結界の中はおよそ二倍の重力が加わっていた。


 突然、自分を囲む結界に天は自らの体に宿したリンダに語りかける。


 ――結界なんかに閉じ込めて意味あるのか?


 ――これはただの結界じゃなさそうですね。体に変調はありますか?


 ――んー……。って重っ! か、体が重い……。


 ――だとすると……。結界内にいる限りはその重さは取れません。この結界を破壊しましょう。


 ――できるのか? 魔力の結界なんだろ?


 ――天様のその剣に私の魔力を注ぎます。魔力では私の方が上ですので破壊は可能かと。


 ――よしっ。やろうぜ! リンダっ!


 ――はいっ。


 天は剣を抜いた。その剣にリンダの魔力が注がれると剣は黒く輝き始める。


「おぉ……っ。なんかカッコいいな。これっ!」


 ――これで大丈夫ですよ。天様。


 天は結界を剣で突き刺す。その場所から結界はガラスのように砕け散って消えていく。それと同時に体の重しが取れ、天はその場から飛び出した。


 だが、目の前は暗い闇へと変わっていた。これはノノの結界による足止めの間にソミナの地の精霊の力で周りの岩を盛り上がらせて作ったドーム状の岩の塊であった。


「なんだこれ? どうなってんだ?」


 ――ソミナ様の地の精霊によって岩で囲まれたようです。


「ふーん。いろいろと考えるもんだな……。こんな岩。ぶった斬ってやるよ」


 ――そ、天様。お、お待ちくださいっ。これは……フェイクかもしれません。不用意に動くのは危険です。少々お待ちください。


 そう語りかけたリンダは小さい魔族を一体呼び出した。小さくも弱そうな魔族だ。それを囲まれた岩の外側に放った。


 ――……っ! やはりですね。外側ではノノ様の魔術が網を張っています。今呼び出した魔族が消滅しました。


「この岩の外に出ればノノの攻撃を受けるってわけか……」


 その時。天は足元に違和感を感じた。


「ん? うわっ! なんか冷たいと思ったら水が溢れ出てるじゃねーか!」


 ――これは水の精霊の……。考えましたね……。どうあっても外に出そうとしています。


「どうすんだよ……。溺れちまうぞ?」


 考える間もなくすでに水は腰辺りまで増えていた。


 ――これでは外に出るしか……。


「リンダ……」


 ――は、はい。どうしました?


「正面突破するぞっ! 外に出たら大きめの魔族を俺の目の前に呼び出せ。そいつを身代わりにしてノノに攻撃を仕掛ける」


 ――タイミングが難しいですね。


「お前は俺のことわかってるだろ? 俺はお前を信用しているからなっ」


 ――天様……。わかりました。では……始めましょう。


 リンダとの信頼は天が思っている以上に固く結ばれていた。リンダは自分を信じてくれる天に恋をして、どんなに辛く当たられようが、邪険にされようが。その想いが消えることはなかった。

 乱暴に見えながらも天が最終的に頼るのはリンダしかいなかったからだ。不器用にも優しい天の想いはリンダの心を掴んで離さなかった。


 天は岩の壁を切り刻んだ。崩れ落ちる岩は光を差し込むと同時に中の水を吐き出す。それに乗じて天は外に飛び出した。


「ノノさんっ。出ましたっ」


「はいよーっ!」


 天の目の前では爆発が起きる。だが、リンダの出した魔族のタイミングはどんぴしゃであった。爆発の痕をソミナは目を凝らしていた。


「……直撃? いやっ……。ノ、ノノさんっ! 逆にやられました!」


 ソミナは違和感に気づいた。だが、時すでに遅く、天の持っていた剣先はノノの首元に突きつけられていた。ノノは頭をかいて呟く。


「やるねーっ? まいったよ……」


「ふぅー……。リンダがいなきゃ黒焦げになってた……」


 天の体からリンダが姿を現した。


「天様。お役に立てて光栄ですっ」


「ありがとうな……リンダ」


 天はリンダを優しく手のひらに乗せる。二人は笑い合っていた。


「お二人は素晴らしい信頼関係ですね。ノノさん」


「そうだね。それにしても天は凄いなー。ここに来た頃とは別人だよ。異世界者って何者なんだろ。能力高すぎだよ……」


 その日の夕食は豪華だった。天は見たことのない豪華な料理を前に待ちきれない様子でそわそわしていた。つまみ食いをしようとたまに手を伸ばしてはその手をノノに弾かれる。


「それにしても姐さん。どうしたのこれ?」


「んふふ。これは王国からの差し入れよ。魔導騎士団様にってね」


「団長。もしかしてお仕事ですか?」


「さすがソミナね。わかってるじゃない。今回はルメールの魔導士からの依頼よ。魔石を探したいから騎士団あてに護衛がほしいってね」


「護衛ですか。それならば我々じゃなくてもよろしいのでは?」


「ヒューズナイトがこっちに回したのよ。天君の修行も兼ねてるんじゃないの?」


「俺の修行? おっちゃんは元気だったか? お姉さん今日会いに行ってたんだろ?」


「元気過ぎて新しい団長はヘトヘトらしいわよ? それと……。今回の護衛任務はノノとソミナ。それに天君とリンダちゃん。もう一人、新人を連れて行ってもらうから」


「し、新人? いきなり新人に任務とかキツくない? って姐さんは行かないの?」


「ただの護衛よ。あたしがいなくてもあんたたちで大丈夫よ。それにあの新人君なら大丈夫じゃないかしら。なんでも優秀な獣人族で古代魔導を使うって話よ。なかなか面白そうな子でしょ? 明日、クライアントと合流してそのまま任務についてもらうから今日はたくさん食べなさい?」


「よっしゃあーっ!」


 天は何の肉かもわからずに張り切って食べ続ける。


「天様ったら……。ゆっくり召し上がれば良いのに。かわいい……」


「ひんはほはへほほ(リンダも食べろよ)」


「はいっ」


「えっ? 今のでわかるの? ヤバくない?」


「確かに……」


 四人は笑いながら食事を楽しんでいた。それは天とリンダが魔導騎士団に快く仲間として迎えられたことを意味していた。

 その様子にアメリは安心感を覚えると共にヒューズナイトに言われた言葉を思い出す。



   ◆◆◆



 今朝。アメリは王国に呼ばれていた。王国からの通達を受け、魔導騎士団へ正式加入する新人と会っていた。

 天と同じくらいの年派のいかない少年は目をぎらつかせていた。


「君が獣人族の子?」


「だったらなんだ?」


「別に? 魔力は劣るけど、何よりもその目。ゾクゾクしちゃうわ……」


 少年は色っぽいアメリの仕草に下を向いた。


「強がってても恥ずかしがり屋なのね? 君の得意な魔術は?」


 ゆっくりと顔を上げた少年はニヤリと笑みを浮かべ言い放った。


「魔法陣だっ」


 その言葉にアメリは少年を認めた。その堂々たる言葉。自信。そして、揺るぎない目。何よりもその強い心に少年を快く魔導騎士団に迎え入れた。


 ―――――――――


 王国の仕事を一通り終えたアメリはヒューズナイトと会っていた。


「天の様子はどうだ?」


「いろいろあったらしいけどね。ようやく気づけたみたいよ?」


「そうか……。魔力も持たず、それを感じ取れない異世界者はこの世界では行動が制限されると思ったが……。あいつは闇の精霊と出会った。本当に運が良いやつだ」


「運も実力じゃなくて?」


「ふっ……。違いない。ところでアメリ。とある魔導士からの依頼を引き受けてほしいのだが……」


「魔導士からの依頼? 何?」


「魔石採取の護衛を頼みたいそうだ。場所はルメールの南にあるあの海だ。お前んとこに水の精霊使いがいるだろ。ちょうど良いかと思ってな」


「ふーん。海底の魔石採取の護衛てことね……」


「そうだ。珍しく慎重だな? 何かあるのか?」


「別に? ……ルメールの魔導士ってあまり好きじゃないのよね……」


「お前がそんな格好してるからだろ」


「人の趣味にケチつけないでってば。たまになら触ってもいいのよ?」


「触るかっ! 気持ち悪い……」


「ひ、ひどいわね……」


「それよりも……ルメールの南の海にいるポンドスには気をつけろ。天の連れている闇の精霊の魔力に反応されたら厄介だ」


「わかってるわよ。本当はその任務にリンダちゃんを連れて行きたくないんだけどね」


「だったら連れて行かなければいいだろ」


「バカねぇ? そんな野暮なこと……あたしにはできないわよ……」



   ◆◆◆



 アメリは天とリンダを見つめていた。


 ――こんな二人を引き離すなんて。それに……予想以上の成果を見せてるしね。


 実のところ、アメリは土壇場まで躊躇っていた。護衛の任務自体に何も問題はない。ソミナの水の精霊の力を使えばいとも容易い任務であった。ノノの魔術とソミナの精霊の力はアメリも認めている。


 だが、任務中に五神が現れたとなると話は別だ。何よりも優先すべきはクライアントの安全の確保。誰かを庇いながら自分の身を守るのは困難だ。そして、さらに厄介なのは海中に引きずられること。

 水の精霊の命を受けた五神のポンドスは姿を持たない。というよりは水であればその姿を宿すことができる。つまり、広大な南の海全てがポンドスであるということも言えるのだ。その中に引き込まれたら終わり。いかに水の精霊の力を持ってしても逃れることはできないのである。


 そんなアメリが口を開いた。


「明日の任務のリーダーはノノ。あんたに任せるわ」


「了解ーっ!」


「ソミナはクライアントと共に水中へ、新人君は見学させといてね」


「了解……」


「お姉さん。俺とリンダは?」


「天君とリンダちゃんは海岸にいるモンスターの殲滅をしてもらうわ。そして……。一つだけ必ず守ってほしいことがあるの―――」


「な、何だ?」


「海の中には絶対に入らないこと。いい? これは絶対よ?」


「……ま、まあ、入らなければいいんだろ?」


「約束できる?」


「あぁ」


「なら問題なさそうね。ノノ。天君のことは厳しく監視してね?」


「はーいっ! 任せといて!」


 ―――――――――


 こうして、天の初任務の日がやってきた。定刻通りに待ち合わせの場所であるルメールの町にある噴水前に向かうとひと際豪華な馬車が停まっていた。その少し離れた場所に一人の少年がポツンと立っていた。


 ノノが馬車に近寄り、声をかける。


「王国の魔導騎士団の者です。本日は依頼主様の護衛を精一杯勤めさせていただきます」


 馬車の小窓が開き、ノノと依頼主が話をし始めた。


 天とソミナの側に先程の少年が近づいてきた。


「アメリアナ団長に言われた通りにここに来た。昨日付けで魔導騎士団に配属されたレオニードだ」


「あなたが新人さんですか。私はソミットナインドットと申します。レオニードさんはおいくつですか?」


「俺は十三になったばかりだ」


「俺の一つ下かー……。よろしくな?」


 無邪気な顔で手を差し伸べるもレオニードは不機嫌そうにその手を払った。


「悪いけどよ。馴れ合うつもりはねーよ。それよりお前誰だ?」


「俺は日向天。異世界者? だっけ? ソミナ」


「はい。天さんは異世界者です。騎士団の団長であるヒューズナイト様からお預かりしております。レオニードさん。今日からよろしくお願いします」


 レオニードは返事を返すことなく背を向けた。ちょうどノノが三人の側に近づいてくる。


「一応、話はつけておいたから……。私たちは先に海岸に行って周辺の安全の確保からね。 ん? 君が新人君? かわいいね?」


 ノノはレオニードを見下ろす。


「レオニードだ。あんたがノズワードノワールか?」


「ノノでいいよ。姐さんから聞いてるよ? 魔方陣書けるんだって?」


「あぁ。詠唱よりも確実で強力だからな」


「じゃあ、早速腕前を披露してもらおうかなー。南の海まで転移したいんだけど。できる?」


 レオニードは無表情で少し後ろに下がり、指で地面に大きな円を書き始めた。見事なまでの歪みのない円。外側から中心に向けて古代文字を書き入れる。それを不思議そうに見つめる天は思わず呟いた。


「へぇー……。魔方陣ってこうやって書くんだな……」


「天さんは魔法陣の存在を知ってるんですか?」


「知ってるっていうか……。なんとなく? 魔術ってやつの一種だろ?」


 ノノが天とソミナを見下ろす。


「魔術の一種ね。間違いではないけど。魔法陣は古代魔導だからねー。誰でも書けるって訳じゃないんだよねー。この若さでここまで正確に書けるのはちょっと凄いかも……」


「ふーん。こいつ凄いやつなんだな……」


 レオニードの書き上げた魔法陣で海岸へ転移した四人は準備を始めていた。


 ノノの指示により、海岸のモンスターを殲滅させ終えた天の前に着替えを済ませたソミナが姿を現した。


「お待たせしました」


「な、なんで水着になってんだよっ!」


「海に入るんですよ? 服が濡れるのは嫌なので……。って……。ど、どこ見てるんですかっ!」


 ソミナは顔を赤くして豊満な胸を抑える。低い身長にさることながら見事に成長した体つきに天は目を背けた。


「ど、どどどこも見てねーよっ!」


「あれれー? 天ってばソミナの発育した体に興奮しちゃってるの?」


「し、しししてねーよっ!」


 その様子を見て呆れ返るレオニード。恥ずかしがるソミナ。それを面白がるノノ。


 そしてもう一人、怒りをあらわにする者が姿を現した。


「そ、天様っ! み、見てはいけませんっ!」


 リンダは天の体から出るやいなや、顔にへばりついて目を覆う。


「だ、だから……。見てねーってっ!」


「こんなに鼻の下を伸ばしてっ!」


 それを見たレオニードは天に近づいた。


「お、お前……。闇の精霊を連れているのか?」


「ん? あぁ。こいつはリンダだ」


「お前の魔力の正体はこいつだったか……。こいつが抜けた途端に魔力が全く無くなるとはな……」


「異世界者は魔力を持たないんだってよ。それにしても魔方陣とか書けるのって凄いんだろ? カッコいいよなー……」


 無邪気に笑顔を見せる天。レオニードはそれを訝しげに見ていた。


 ――こいつ……。魔力もないくせにこの世界で生きていけるのかよ……。


 やがて依頼主が到着。馬車から降りてきたのは老人だ。それを出迎え支えるノノ。老人の名前はグリガムゴートル。ルメール一の魔導士の名家の当主であり、実質的にルメール地方を治めている人物だ。


「君たちが魔導騎士団か。随分と若い連中ばかりじゃの……」


「歳こそ若くても皆、優秀です。海中に同行するのは彼女です」


 ノノがソミナに目で合図を送った。ソミナは恐縮そうに挨拶をする。


「ソミットナインドットです。本日はよろしくお願いします」


「ふむ……。良い目じゃな。魔石の知識はおありかな?」


「多少の知識ですが。私の精霊が知恵を授けてくれます」


 ソミナは自身の水の精霊を晒した。背格好はソミナと似たり寄ったりの細身の女性だ。背中からソミナを抱きしめ、上目遣いを見せる。


「ふむ。立派な精霊じゃ。それで……そこの少年たちは?」


「彼らはまだ見習いです。海岸に住まうモンスターの殲滅を任せております。天、レオ君。挨拶を」


 ノノに促され、レオニードが一礼した。


「レオニードだ」


「日向天。俺は……。お、俺は……」


 天は言葉を詰まらせた。老人はそれを見て口元がほころぶ。


「魔力のない少年よ。君はこの世界に何を望む?」


 グリガムの問いかけに天は頭をボリボリとかく。


「望むのは一つだけ。この世界で生き延びるだけだ」


「ほっほっほ……。なかなか面白い答えじゃな。口にするだけではなく生き延びてこの世界をよく見るがよい。さすれば元の世界に戻れるはずじゃよ」


「じ、じいさん! 俺のような異世界者を知ってるのかっ!」


「こ、こらっ! 天! 口の利き方に気をつけなさいっ!」


 ノノは天を睨んで叫んだ。


「よいよい。少年よ。異世界者とはわしが若い頃、共に冒険をしたことがある」


「い、今……。その人は……」


「その冒険を終えてすぐに亡くなったのじゃ。彼は集めた魔石でいろいろな武器や道具を作ってくれての。間違いなくその功績はこの世界に受け継がれておる」


「な、なんで死んだんだ?」


 天の問いにグリガムは複雑な表情を浮かべる。


「それが彼の寿命じゃよ。どのような理由があっても命が絶たれた時が寿命じゃ」


「…………」


 天はそのグリガムの表情に言葉を詰まらせた。


「じゃが……。彼は自らの人生に悔いはないと言い残した。難しく考えることはない。自身の生き延びることが目的ならそれを果たすがよい」


 グリガムは天に笑顔を残し、ソミナと共に海中に入っていった。


 水の精霊は動きの制限される海中でその力を発揮していた。ソミナはグリガムと共に海中を探索する。 



 そして、海岸に残された三人とリンダは砂浜に腰を下ろし、退屈そうに海を眺めていた。ザザーっと波の音だけが繰り返し聞こえる中、レオニードが呟く。


「お前……。異世界者とか言ったな? どうやってこっちに来たんだ?」


 天は空を見上げ目を細める。


「……それがわかれば苦労しねーよ……」


 呟いた天は少し寂しそうな表情を見せる。それを察してかリンダは天の首元を優しく抱きしめていた。


「でもさー……。天がこっちに来た理由ぐらいはあるんじゃないのかな?―――」


 ノノもまた水平線を眺めて呟く。


「―――この世界が天を必要としているとかさ……」


「そ、そうなのか?」


「……わかんないけどねー。少なくとも姐さんと私、ソミナもね。天に会って良かったって思ってるんだよ? それだけで十分じゃない? 理由としてはさ……」


 ノノの無邪気な笑顔は天の頬を赤く染めた。


 ふてくされたように照れて鼻をかく天。遠くを眺め、海を映した瞳の奥に嬉しさを隠していた。


  

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