合流
「うぉっ!」
ジュエルの眼の前を通り過ぎていく
その色は只の鈍色では無く、薄緑がかっていた。
それが意味する所は、
轟々と唸る
その
「こんな街中で
「ワタクシ王都に巣くうゴミ虫共に掛ける慈悲は持ち合わせておりませんの。ごめんあそばせ」
うふふふとか優雅に笑っているがコイツ正直頭ぶっ飛んでるだろ。
何をどう見ていきなり背後から攻撃してくるとかどうなってるんだ?
「初対面のイケメン捕まえてゴミ虫とか嬢ちゃんどう言う教育受けて育ったんだ?俺様が親だったら草場の影で号泣しちゃうぜ」
「ご冗談、それにワタクシの両親は健在ですわ、勝手に殺さないでくださいまし!!」
だらりと脱力した状態から、劇的な加速。
眼の前の少女は一息で三連突きを繰り出してくる。
ジョエルは大きくバックステップする事でその突きを躱すが、基本徒手空拳であるジュエルにとって間合いを開けるほど状況は不利になっていく。
只それも、戦闘を行うのならばの話なのだが。
「そりゃすまんこって。只俺様にはいきなり騎士様に襲われる謂われが無い。何より善良な一般市民を守る為の王立騎士団じゃ無いのか?」
間合いを開けた事によりジュエルは周囲を確認する。
この一瞬のやり取りの間に、現れた時同様アーヴァインは闇に紛れその存在すら既に感じさせない。
アイツ任せたってのはこの事か。
「――――今日は厄日だな。全くツイて無い」
両の手を広げ身を低く屈める。
我流、所謂獣の本能の赴くままジュエルは身構える。
丁寧な言葉の裏に見え隠れする狂気。
まるで下水を流れるクソを見る様な眼。
『今までワタクシ1000人程人を殺してますの』とか言われてもああ、そうでしょうねとしか答えられない。
こんなのが王立騎士団王都警備隊の隊員なのか。
この王国大丈夫?
「ええ、善良な市民ならば身を挺して守りましょう。それが例え悪人でも王国民なら外敵から守りましょう―――――」
ひゅうひゅうと風が吹き、眼の前の少女の短めの髪が揺れる。
「―――――それが私の騎士道ですわ。ですが人外を守る志など持ち合わせてございませんの」
言うに事書いて俺様を人外だと?
この嬢ちゃんゴリゴリの教会派じゃなーかよ!
それにしても良く分かったな、この嬢ちゃん。
シェリーの姉御やギルじいなんかだと見た目で即亜人種と分るんだが、俺様見た目ほぼ普人と変わらないのにな。
「全く、偶に居るんだよな。普人至上主義。そう言うのよく無いぜ?獣人だろうが地人だろうが人は人だろう?」
「何が人は人だ――――――獣風情が偉そうにぃいいい!!」
「やっべ!」
何がどうなってこうなったのか全くもって分らないけど、触れちゃいけない所に触れちまったのか。
眼の前の少女の細剣に纏わり付いていた緑色の魔力、その輝きが強くなり始めると薄かった緑色の魔力が美しい
(こりゃやべー奴に捕まっちまったな。)
ジュエルは何時でも動き出せる様に踵を浮かしつつ、
使う
ただそれだけだが役に立つ
「王立騎士団王都警備隊第3隊副隊長―――――リュイ・ボウィット行きますわよ!!」
「ちょっとまて、人の話聞け!」
この嬢ちゃんの
しかも見た限り俺様と同い年程度。
それで副隊長とか結構な実力者じゃないか。
斥候メインの格闘職である自分で相手取るには現状無理がある。
――――ぞくり。
背中の毛がピンと立つ、そんな感覚に襲われジュエルはその場を瞬時に移動する。
ジュエルが動いたほぼ同時にリュイから瞬速の突きが放たれる。
「
ほんの一瞬前までジュエルが立っていた石畳がリュイによる細剣の一突きで深く穿たれる。
「うおっ!死ぬ、喰らったら死ぬって!」
「あら、上手に避けましたわね、さっすが、獣の血が混じっていらっしゃる殿方は逃げるのがお上手で」
カチン。
「あのな!俺様は斥候なの。斥候。人には人にあった役割ってのがあんのよ?分る?いや、わっっかんねーか?頭の中まで筋肉で出来てるからいきなり人様の話も聞かないで武技放ってくるんだろ?オメーもし俺様がミゲル獣王国の王子とかだったらどうするんだ?国際問題だぞ?」
「うふふ。どうせ獣は死ぬのですから良いじゃ無いですか?身分だろうが為人だろうがどうでも――――――獣が人のフリをする事自体が罪なのです!!貴方が誰だろうかどうでも良いのです。兎に角―――――――死んで下さいまし」
(うっはぁーーーー!聞く耳持たん所か何もかもぶっ飛んでるな)
「折角可愛い顔してるのに持った無いない」
ぞくっ。
「
「うおっ!」
問答無用の突きをジュエルは仰け反りながらも躱す。
距離を取っては一突きで間合いを詰めてくるリュイにジュエルは手こずっていた。
突きを躱し間合いを開けては瞬時に詰め寄ってくるリュイ。
ジュエル自身今のままでは勝ちは拾えない事は自分でも良く分かっていた。
(もうぼちぼちのはず何だけどな・・・・・・・)
ぞぞぞ!
「
「うっは!」
だからこそ神経を研ぎ澄まし、自分の勘を信じただ避ける。
「ちょこまかと―――――ならば・・・・・・『
先程迄リュイが放っていた
一呼吸で四連撃を面で放つ為、威力こそ大きく下がるが避ける事が難しい、すばしっこい獲物を弱らせる為の様な
リュイから放たれた突きに、咄嗟に反応したジュエルだったが先程までの攻撃が点ならば今回の攻撃は面。
初見で見切るのは至難の業。
「よけっ―――」
切れない。
そう思った時だった。
ガキン!!
金属と金属がぶつかり合う甲高い音が鳴る。
それはリュイの細剣がジュエルのその身を穿つ音では無く、短剣によって細剣が跳ね上げられた音だった。
「ごめん。遅くなった」
「たいちょぉおおおおおっ~~~死ぬかと思ったわ」
カル、合流。
平民騎士見習いカルの苦難 黄金ばっど @ougonbad
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。平民騎士見習いカルの苦難の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます