268カオス 小説を「写経」中です

 わたしは疲れています。

 原稿用紙に万年筆で書くと疲れるということがよく分かりました。


 さっそく万年筆を手に小説を書いています。

 や、嘘をつきました。過去作を原稿用紙に書き写しています。パソコンの画面にカクヨムり過去作品を表示させた状態で、それを原稿用紙に書き写していく作業です。執筆ではなく「写経」か?


 ふだん、小説はスマホで書くもんで、原稿用紙に万年筆で書きはじめると、わたしの小説を書く上でのクセのようなものについていくつも発見がありました。「あ、おれってこんななんだ」と。


① 楽しい。

  なまの文字を書くって楽しいです。めちゃ楽しい。

  ふだん仕事をしているときも、ほぼ生の文字で書類を作ることはありません。一太郎かエクセルを使って作るわけで、ぜんぜん手書きしないんですよね。手で文字を書く、何百文字も何千文字もって、すごく新鮮です。


② 汚い。

  知ってましたけど。わたしの字は美しくない。いや、自信満々にじぶんの書く文字は美しいと胸を張って言える人が何人この国にいるだろうか(なにこれ?)。

  パソコンで書くと、当たり前ですが既定のフォントに文字が変換されて出力されます。でも、手書きだともろに自分の手跡が原稿用紙に記録されていくわけで。それが残念な出来栄え。少し笑える。でも、味があって楽しい。「もっときれいに書きなさい」ってだれも言わないし。

  当初は原稿用紙に書いた小説をTwitterにアップしようと思ってたんです。でも、これは人に見られたら笑われるよな……。


③ まちがえる。

  誤字、脱字というやつです。

  パソコンで文章を書いていると、キーボードのミスタッチとかで誤字打っても、即座にバックスペースで打ち直せるけど――原稿用紙に万年筆で書いてしまうと、誤字はずっとそこに記録されたまま。

 「ああっっ!」

 とか言いながら書いてます。書き損じの原稿用紙を捨てるなんてもったいないので、できるだけ間違わないように集中して書き写すのですが、800文字くらい書くと集中が切れて間違ってしまう。「ああっっ」

  パソコンで書くうちに「集中して物事に取り組む」ってことを忘れてしまっていたみたいです。


④ 縦書きって

  原稿用紙に書いていて思ったのですが、いまの時代、縦書きなんて……。業務日誌は横書き、宅配のサインも横書き。学校の国語の授業くらいじゃないですか? 縦書きで文章を書くのは。高校生以来だ。縦行に文字をバランスよく収められない。横書き文字に慣れ切ってしまっているのだなとよく分かりました。


⑤ とめはね! 

  改まって文字を書いてみると、わたしの文字には「とめ」「はね」「はらい」がないことに気付きました。文意を伝えるだけなら、文字の形というのはべつにどうでもいいと考えてきた結果、こうしてきたのです。でも、原稿用紙に書かれた文字も含めて作品としてみてもらいたい(そもそもTwitterにあげようとしていた)と考えたとき、文字の形というのは非常に重要な要素になってくるのだと気付きました。

  字形に気をつけながら書くと、格好はいいけど、とても気取った文字となって、ガサツなわたしが書いたものとは思われません。ま、それも楽しいですけど。


⑥ 時間がかかる。

  いま原稿用紙に8枚書いてますが、5時間くらいかかっています。字形に気をつけながら、小学生の「書き方」授業のように書いていくので、とても時間かかります。あー、文字のきれいな人がうらやましい。小説の「写経」を終える頃には、少しくらいきれいな文字が書けるようになっているだろうか。


 小説を書いているのではなくて、ペン習字のお稽古をしてる気分になってきた……ま、それでもいいんですけど。

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