263カオス 未来のわたし

 米食品医薬品局(FDA)は7日、米製薬会社バイオジェンと日本の製薬大手エーザイが共同開発したアルツハイマー病の治療薬「アデュカヌマブ」を承認したと発表した。(毎日新聞)


 いつもなら、わたしの近況ノートに書く内容なのだけれど、すごく書く気にさせられるニュースなのでエッセイこちらに書いてみます。


 認知症の原因のひとつ、「アルツハイマー病」の治療薬がアメリカで承認されたというニュースです。若い人にはまったく実感のないことなのかもしれませんが、人間は年を取るとボケます。認知機能が低下します。


 わたしの父親はアルツハイマー型の認知症と診断されています。母親が面倒を見ているので(老々介護というやつ?)わたしは、父がどの程度めんどくさいボケ方をしているのか分りませんが、「大変だろうな」とは思います。


 父の父、すなわちわたしの祖父も七十代後半になると認知症を発症しました。

 一緒に住んでいたので、祖父のことはよく覚えていますが、「何度も同じことを繰り返す」、「怒りっぽくなる」、「息子や孫(わたし)の顔が分からなくなる」、「寝たきりになる」、「やがて亡くなる」……という経過をたどりました。わたしたち家族は、祖父が壊れていくのを認められなくて腹を立てちゃうんですよね、いけないことなんですが。特に、わたしは若かったので、祖父にはつらく当たっていたと思います。


 祖父、父と見てきて(101歳で亡くなった祖母も、さいごの数年はわたしがだれか認識できてなかったと思います)、わたしはぜったい認知症になりたくないんです。だから、アルツハイマー病の治療薬が承認されたというこのニュースは、未来に光がさしたような気がします。


 わたしは小説を書き始めたのが遅かったんです。5、6年前からです。20歳で「小説家になる」と思い立って書き始めた人と比べると、四半世紀も書き出したのが遅れてるんです。年取ってから書き始めたので、上達は遅いし、仕事があって書く時間も学生のように確保できるわけではありません。


 わたしに残された時間は若い人たちよりずっと少ない。

 その少ない時間は、認知症を発症することでさらに短くなるリスクを抱えているわけで……。いや、ぜったいにいやだ。これまでできていたことが、だんだんできなくなってゆく、書けていた小説が書けなくなってゆくなんてことには耐えられません。


 走ったり、飛んだりする体力や運動能力の衰えは、知力の衰えよりずっと前にやってきます。髪の毛に白髪が増えるのもそうですが、がっくりきますじぶんの衰えを感じると。この上、認知機能まで衰えていった日には、絶望のあまり死んでしまうかもしれません。


 運動能力は仕方がないとして、知的創造力に関しては、いまよりもっと高いレベルになりたいんです。そのためには認知症なんてなってられないです。頼むぞ認知症治療薬! でも、テレビで言ってましたけど、めちゃくちゃ高額らしいです。年間600万円かかるとか。10年で6000万円? 無理じゃん。

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