259カオス あこがれるってわかりません。

 きのううちの奥さんと話をしていて、こんなことを聞いた。


「息子の友達のお姉ちゃんは、テニス部なんだって」

「ふうん。〇〇ちゃんも中学生になったからね」


 意外だった。テニスなどという(一見すると)おしゃれなスポーツを選ぶような女の子ではないと勝手に思っていたからだ。


「なんでテニス部なん?」


 硬派でクールなイメージの女の子なので、華やかなテニスなどではなく、もっと地味で硬い部活を選ぶのだと思っていた。


「うん、テニス部の先輩にね。きれいで優しくてスタイルもよい女の子がいるらしくて、あこがれているんだって」

「ふーん」

 

 一般的にはそういうこともあるのだろうと知ってはいても、じっさいにそんな理由で部活を選ぶことがあるとは、おどろいた。小学生のころからテニスがしてみたかったというなら、わかるのだけれど。

(ちなみに、わたしも奥さんも部活ではテニスをしていた。「日に焼けるからイヤ」らしく、共通の趣味とはなっていないが)


「女の子あるあるなのよ」


 ええ、女の子あるある?

 そうなんですか?


 先輩にあこがれる?

 ないなあ。わからない。そんなに身近な人にあこがれたりしない。同じ学校に通いたいとか、同じ一緒に部活をしたいとか思わない。


 以前、「あこがれを形にする」って書いたと思うのだが(ずいぶん前のことで忘れてしまった)。あれもじぶんの胸の内にある、イメージに形を与えるって感じて書いたと思う。具体的な対象があるわけではない。


 小説や、小説家にあこがれるということもない。

 特に、じぶんでも小説を書きはじめるようになると、ただ読んでいたときとは異なって、じぶんの書く小説の目標となり得るか、基準となり得るかという視点から小説を読んでしまって、単純にその小説世界に入り込めなくなるからなおさらだ。


 〇〇ちゃん、うらやましいなあ。

 あこがれることができるって。

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