250カオス 子ども向けの小説だって?
『拝啓パンクスノットデッド様』(石川宏千花 くもん出版)を読みました。
例によって、図書館で借りてきて読んだのですが、いいですね。とてもいい。
石川宏千花さんの中高生向けの小説です。中高生向けといってもラノベじゃない「YA(ヤングアダルト)」と呼ばれるジャンルの小説で、児童文学(!)です。石川さんの小説は、去年読んだ『青春ノ帝國』がとてもわたし向きの小説でよかったんですけど(エッセイでいうと「132カオス」ですね)、『拝啓パンクスノットデッド様』は、もうひと回りいいです。第61回日本児童文学者協会賞受賞。
中学生の弟とふたり、ボロアパートで暮らしているバイト三昧の高校生が、バイトの先輩から「ベースやるんだって。バンドのサポートしてくれない?」と誘われたことをきつかけに、人を拒絶したり、かと思ったら繋がったりしながら、変化していく数週間を描いた小説です。
わたし、音楽は80年代アニソンしかわからないので(爆)、パンクってなに? 頭がツンツンしたうるさいやつ? というレベルでしか「パンク」のことは分からず、したがって作中色々出てくる音楽用語(主にパンクロックに関する用語)もさっぱりなのですが、心配いりません。分からなくっても泣けますから。
ネットのインタビュー記事で読んだのですが、作者の石川さんは中学生のころから「パンク」を聴いていたらしいです。ある面、パンクに救われていたとも。この作品からは、石川さんのパンク愛がびしびしと伝わってきて、言葉は分からなくても熱量で物語を感じさせてくれます。(熱量の伝わり方は、7カオスで書いた近藤文恵さんの『サクリファイス』と似てる)
『青春ノ帝國』の感想にも書いたのですが、石川宏千花さんは中高生の複雑で繊細な内心を、切れ味鋭い描写で読み手の前に差し出す力を持った作家さんです。文章はめちゃくちゃ読みやすいのですが、鋭い刃物が隠されている……という感じ。ところどころ創作をしている人には刺さる表現もあるし、中高生だけに読ませておくのは、とてももったいない。
そもそも、児童文学ってどういうくくりなんですかね。
『拝啓パンクスノットデッド様』に子ども向けの甘さはないですよ。ぜんぜん主人公に都合よく話が転がっていかないし、「マジか」と辛目の展開が連続して最後まで読者をハラハラさせる「塩対応」ぶり。キャラクターとストーリー構成は純文学のそれ。
児童文学とラノベの境目とか、児童文学と一般文芸の境目ってなにでどこにあるんでしょうね? 児童文学なのに大人の事情があって、こういうふうに区分分けされているのでしょうか。どなたか知りませんか。
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