237カオス 職場で小説を読みながら泣いちゃった話

 また、やってしまった。


 二か月前、ブックオフで号泣したばかりのわたし(204カオス ブックオフで号泣した話)。今度は職場で号泣しそうになって、あやうしあやうしの巻。


 こないだブックオフで号泣したのは、マンガ、美内すずえさんの『ガラスの仮面』を立ち読みしたからでしたけど、今度のは小説です。


 川上未映子さんの『乳と卵』(文春文庫)


 クライマックスの場面で涙が出てきました。まさか、泣けるような展開じゃないだろうと油断していたのがまずかった。すごいシーンでした。具体的にどういうところに泣いたのか説明できたらよかったんですけど、この小説、言葉にするのが難しいので……。ただ、親子の間で交わされるとっても不器用な愛情のやりとりが描かれた小説なんですよ。泣けるよね。芥川賞受賞作読んで泣く日がくるとは思いませんでした。


 じつは、川上未映子さんって、苦手なんです。だから、これまで読むことはなかった。

 とてもとんがった感性をもってそうで(じっさい持っている)、文章でそれがびしびし伝わってくるタイプの作家さんだろうと思ってて、読んでみるとじっさい思っていたとおりで、かなわないなあ。


 わたし、すっごく嫉妬深いんだと思う。ええ、わたし自身が。才能に嫉妬するタイプ。


 大きな才能に出会うと、素直にその才能を認めて、なんなら崇拝してしまうタイプの人と、その才能に嫉妬して認めることができず、ついには憎悪してしまうタイプの人とに分かれると思う。わたしは後者。口ではきれいごとをいつてても、胸は嫉妬の炎で焦がされている……、なんのメロドラマだ? っていう(笑)


 川上未映子さんが苦手っていうのは、そういう感じ。彼女の才能が妬ましくて仕方がないんです。情けない。でも、『乳と卵』は読めてよかったです。


 こう書くとなんなんですが、とても初々しい小説なんですね、これ。裏表紙には「日本文学の風景を一夜にして変えてしまった」と煽りの一文がありますが、そんな肩に力の入った小説じゃないですよ。「こんな感じで書いてしまったけど、いいのかな」って書きながら迷っているように読める。


 文体は、独特で読みにくい。言葉の流れが、よくある小説のそれとは違うので、ひとつひとつ言葉の意味を確かめるように読んでいかなければならない。さらっと読みたい人にはストレスで、どっぷりハマって読みたい人には至福の小説だと思います。


 もあひとつ川上未映子さん、読んでみようかなあ。迷う迷う。

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