235カオス 「七」を読んでみてください

 ヤフーニュースを見ていると「ヒ・シ発音混同の謎 どう解明」という記事が。


 わたしのパターンなら、近況ノートに書く案件ですが、長くなりそうなのでエッセイに書くことにしました。


 記事の内容は、「ヒ」と「シ」の発音にが起こるメカニズムを、リアルタイムMRIとスーパーコンピューターを用いた最新の研究から明らかにしていこうという取り組みについて書かれたものです。


 わたしが、ぐぐっと引き寄せられるように読んだのは、「ヒ」と「シ」をすることではなくて、自覚的に「ヒ」を「し」と読み、「シ」を「ひ」と読むことがあるのではないか、という興味があるからでした。


 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10


 読んでみてください。


「いち」「に」「さん」「し」「ご」「ろく」「しち」「はち」「く」「じゅう」


 でしょうか。


「いち」「にい」「さん」「しい」「ごお」「ろく」「ち」「はち」「くう」「じゅう」


 ではないですか?


 普通は、上の読み方をするのでしょう。仕事上は、わたしも上の読み方で読むのですが、ネイティブに発音すると、下の関西風のイントネーションで「1から10」まで数えます。


 7は、(「なな」とも読むのは知ってますが)「しち」ではなく、「ひち」ですよね。質屋は、「ひちや」でないですか?



『京都ぎらい』(井上章一 朝日新書)という本があります。

 2016年の新書大賞で、とてもおもしろい本です。井上さんという人は、人と違ったことや、ものの見方をするのが好きな人らしく、普通とはちょっと違った

視点から京都をながめた本になっています。


 この『京都ぎらい』の最後のエピソードが「七」をどう読むかという内容でした。井上さんは、幼いころから「ひち」と読んできたらしい。「七五三」は「ひちごさん」とルビがふられるべきだと……(笑)


 わかるわかる。


 わたしも「七」は「ひち」と読むところで育ってきましたから(井上さんの育った京都・嵯峨とはぜんぜん離れてますよ)。


 こうした発音の変容って、生まれ育った環境が大きいんでしょう。わたしは「七」は「ひち」以外に「しち」と読めるようになってますし、ぜんぜん不便は感じませんが……。


 頭ごなしに『「七」を「しち」と読む以外は認めません』などと言われようものなら、


 ――ちょっとまってくださいよ。死んだじいさんもばあさんも「ひち」と読んでましたけど。ばかにしてるんですか?


 心穏やかでないことになりそうです。

 なんかこういったこと――生まれついての習慣って、自己のアイデンティティとじかに結びついているような気がします。理屈じゃないっていう。



 おっと、1000文字超えて書いてしまった。近況ノートにしなかったのは正解だったようです。いわゆる「標準語」つてやつに違和感を感じることってありますよね? えっ、小説は標準語で書かないとまずいって? えー、それはそれということで。だって、日本全国の人に訴求したいですもん。

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