234カオス 自転車にのって

 自転車に乗るのが好きです。

 高校、大学、就職してからしばらくと、わたしの移動手段はもっぱら自転車でした。好むと好まざるとに関わらず、自転車に乗って移動するしかなかったんですが。電車やバスは、不便な上に時間もかかる。10キロ以内なら、自転車で移動した方が、時間的にも経済的にも安上がりだったのです。


 一番乗っていたのは、高校に通っていた頃、片道8キロの道のりを30分くらいかけて通学するのですが、飛ばしてましたね。えっ、スピードです。走行速度。若いって、いのち知らずってことですよ(笑)坂道を利用すると、時速40キロくらいまでスピードが出るんですよね。いま考えるとクレイジーとしか思えませんが、当時は嬉々として走ってました。


 おかげで鍛えられちゃって、太ももなんて周囲が40センチ以上ありました。丸太ですよ、丸太(笑)いまでは見る影もなく、細くなってしまった太ももですが、よく見ると、太ももに妊娠線のようなひび割れが何本も走ってるんですよ。筋肉の発達に皮膚が追い付いてなかったんでしょうね。軽く裂けちゃってます。


 いまは時速10キロくらいでしか走りません。安全第一で、交通ルールも守ってます(当たり前だ)。



 そんなわたしに刺さった本が、これ。


『自転車にのって アウトドアと文藝』(河出書房新社)


 今昔とりまぜた27人の作家(?)の短編を集めたアンソロジーです。

 自転車をテーマに、作家が書くことがあんまり聞かないので、本屋さんで見かけて読んでみたのです。おもしろかった。


 なかでも、面白かったのが、夏目漱石と萩原朔太郎のそれぞれ「自転車日記」です。どちらも、大人になってからはじめて自転車に乗りはじめたときの、ドタバタをエッセイ(?)にした文章ですが、最高におもしろい、笑えます。ふたりとも、おもしろ過ぎる。文豪、どんくさい。


 角田光代さん、三浦しをんさんといった現代作家や、江戸川乱歩、志賀直哉、夏目漱石まで、いろいろな作家が自転車について書いた文章が集められています。執筆陣を見るだけでも楽しい。

 共通して書かれているは、自転車で風をきって走るときの爽快感、そして、歩くのとは比べものにならないくらい遠くまで出かけられる満足感です。いま、こういうこと忘れてしまってるなあ(自動車に乗るともっともっと遠くまで出かけられるから)。また自転車で出かけてみようかなとワクワクさせられる一冊でした。


 1700円プラス税。わたしはいい1700円の使い方だと納得しましたが、特に自転車が好きでもない人には、ちょっと高いかな。

 

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