227カオス 漫画を全巻大人買いした話

 ある日、仕事から自宅へ帰ると、オタク嫌いのうちの奥さんが、なにを血迷ったのかネットで『スラムダンク』全巻セットを大人買いしていたので驚いた。


 ――どうしたの?


『スラムダンク』が、来年、アニメ映画化されるそうで、奥さんのなかでは盛り上がっているらしい。



 ――ディズニー以外のアニメは嫌いじゃなかったっけ?



 若い読者さんのなかには『スラムダンク』がなにか分からない人がいるかもしれないので、解説すると……。


『スラムダンク』は、1990年から96年にかけて週刊少年ジャンプに連載された、高校のバスケットボールを題材にとった漫画です。作者は、『バガボンド』『リアル』などの漫画でカリスマ的な人気を誇る、井上雄彦さん。


 ま、Wikipediaを見ずとも、これくらいのことはかけてしまうくらい有名で、バスケットボール漫画の金字塔といわれている。


 スラムダンク知ってます?


 知ってるけど読んだことのない本ってあるじゃないですか『源氏物語』とか『吾輩は猫である』とか。


 わたしにとって『スラムダンク』って、そういう漫画だったんですよ。ほとんど読んだことなかったんです。わたしの興味を引かなかった。


 理由は、「ヤンキー漫画」だったからです。


 不良少年を漫画の主人公に据えるというのは、少年漫画の王道のひとつです。『あしたのジョー』がその典型なんですが(『バガボンド』と書いたので。ふと気づいたのですが、矢吹丈ってどんどん求道者っぽくなっていって、現代の武蔵みたくなりますよね)、不良少年がスポーツするんですよ。そして、というテンプレが。


 ジョーの頃は、不良になるきっかけが、貧しさからくる差別というように、分かりやすくてわたしも入り込めたのですが、80年代にブームとなったヤンキーは、その背負っているものが、もっと複雑で繊細で、もやっとしていました。


 わたしは、そのヤンキーの背負っているものが、理解できなくてまったく入り込めるなかったんです。


 尾崎豊が『15の夜』のなかで「盗んだバイクで走り出す〜♪』と歌ったのが、1983年。わたしには甘えとしか思えなかったし、まったく共感できなかった。ある意味、優等生だったのでしょう。







『スラムダンク』は、中学時代、有名なワルだった桜木花道を主人公に据えたことからも分かるように、ヤンキー漫画としての一面があるんですけど、わたしはこの部分が受け付けられませんでした。


 ジャンプを読んでも、『スラムダンク』は読み飛ばしていました。だから、はじめて通して読んだんだです。うん、おもしろかった。


 読んでて気づいたことは、ヤンキー漫画の側面を途中から切り離してますね。二足のわらじは不用だ、バスケ一本でいける漫画だと踏ん切りかついたのでしょう。


 それは、三井寿の加入と、花道がリーゼントを丸刈りに変えた場面に象徴的です。あそこから『スラムダンク』は、バスケ漫画の金字塔への道を歩みはじめたと思いますねー。


 今日のエッセイは『スラムダンク』読んだことのない人をおいてけぼりにしてしまいました? ま、そういう回もあるということで。


 うちの奥さんは、三井クンがお気に入りらしい。三井と赤木(ゴリ)はいいですよ。


 主人公の花道が、流川と張り合ってバスケを頑張るというのが物語の幹なのですが、影の主人公は、三井とゴリだと思うなあ。


 ――というふうに、バスケが勉強できれぼ、いろいろ考えさせられる部分もある。ほんとによくできた漫画です。『スラムダンク』ぜひ。

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