201カオス あこがれる力

 人には「あこがれる力」が備わっていると思う。


 特に、子どもはたくさんのあこがれる力をもっている。「ドッジボールに強くなりたい」とか「おいしいケーキ屋さんになりたい」とか「おもしろいYouTuberになりたい」とか、いろいろと「〜したい」のが子どもというもので、まさに子どもはあこがれる力の塊だといっていいだろう。


 わたしは80年代のアニソンが大好きなのだが、「銀河漂流バイファム」というロボットアニメに『君はス・テ・キ』という挿入歌がある。歌詞はこうだ――。



 大人の古いおとぎばなしは

 色あせたアルバムのようなもの

 あのときのときめきを思い出せるけど

 もう二度と感じることはできない


 きみは少年 輝いてるそのはなにを見るだろう

 はじめて知る戸惑いさえ恐れず 君はス・テ・キ



 はじめてこの歌を聴いた当時のわたしは15歳で、この歌詞をじぶんたち若者への応援歌として聴いていたが、あれから35年を経たいまでは、大人たちが失っていくあこがれる力への惜別をうたった歌詞に思えてならない。


 わたしは小説家になりたいと思って小説を書いている。でも、ホントの小説家となるためには、子どもの頃のようにが強くないと、決してホントの小説家というものにはなれないと思う。


 大人にあこがれることのない子どもが、決して大人なることができないように。


『君はス・テ・キ』を聴くと、あの頃のときめく気持ちを思い出すことができるけれど、むやみにやたらとあこがれていた力は取り戻すことはできない。


 若さがほしいといっても叶わぬ願いとわかっている。せめて、あのころのあこがれる力を取り戻せないだろうか。むむう。

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