192カオス 判で押したような話

 わたしはWeb作家の傍ら公務員をしている。(逆だ。逆 笑)

 お気づきの人も多いと思いますが、公務員の仕事、いわゆるというのは非効率です。


 ずいぶんと前にも書いたような気がしますが、うちの職場では組織の意思決定――それぞれの職員にどんな業務を振り分けるのかとか、職員が業務を遂行した結果の報告を了承することなど――は、「文書」で行うと規定されています。


 口頭による指示や報告では、不正確になるし、後日、ほんとうにそうだったのか検証できないからだと思います。


 電話一本、メール一通で済むところ、いちいち「文書」に起す必要があります。めんどくさいですね。


 ただ、めんどくさいからといって「文書」を作らずメールで仕事を済ませると、後日、その仕事について「どんな仕事だったの?」と確認されたとき困ります。「メールで報告しています」といっても承知してもらえません。仕事の内容を「文書」で報告することを求められるのです。


 ――上司の決裁印が押されている報告書を提出してください。


 メールに印鑑は押してもらえないため、報告書は紙に印刷して作成しなければなりません。上司の印鑑をもらうのも一苦労です。係長、課長補佐、課長、部長……と書類を手にもって決裁欄に印鑑をもらいに回らなければなりません。わたしの仕事より上司の仕事が優先なので、上司が忙しいときは決裁印を押してもらえません。各級上司でそういうことが起こるので、一枚の報告書に数日かかるというのは、ざらにあることです。


 非効率‼️


 メールでええやろって、めちゃ思います。このIT化全盛の21世紀に、うちの職場ではまだ20世紀を引きずっている感覚です。上司の仕事がひと段落するのをただ待つ、なんて時間の無駄でしょ?


 職場全体で考えたら、のべ何時間を待ち時間に費やしているのか、見当もつきません。その時間の分も公務員には給料が支払われる訳ですから、時間の無駄遣い=税金の無駄遣いです。


 わたしは節約家どケチなので、このことを考えると気分が暗くなります。お金は有効に使われなければなりません。


 わたしのように考えた訳ではないでしょうが、昨年の秋に発足した菅内閣は「脱はんこ」政策を看板のひとつに掲げました。お役所仕事の象徴ともいうべき、判子はんこ=印鑑を書類から一掃し、IT化を進めようという施策です。


 歓迎、歓迎。


 でも、はんこを押すという文化は、職場のすみずみに染み付いているし、書類にはんこを押すという行為がすべての業務の基本となっているので、一朝一夕に改まるとは思えません。


 いきなりの「脱はんこ政策」にハンコ屋さんは困っているでしょうね……。売り上げが激減するでしょうから。


 わたしはやたらと印鑑を求める職場の文化には反感しか抱いていませんが、判子文化そのものは嫌いじゃありません。むしろ好き。いいですよ〜判子。蔵書印ってのに憧れて、実印を作ったときに併せて蔵書印も作ったくらいです。


 ただ、ケチなわたしは安い文庫本か新書しか買わず、蔵書印を押してさまになりそうな立派な装丁をした本を一冊も持っていないという残念な状態。無用の長物と化しています(笑)


 昔はうちの職場にも出入りのハンコ屋さんがいて、自動車を買う時とか、子どもが成人するとかことあるごとに「判子作りませんか」と営業してました。


 判子の円周に八つの接点をもつ字体が縁起がいいだの、材質は象牙か水牛がいいだのハンコ屋さんから買うと高くつくんですよね。それもいまではむかしの話となってしまいました。


 わたしの実印は水牛。蔵書印はつげ。普段使いは黒水牛とプラスチックの2本です。


 えっ、いったいなんの話だって? だから判で押したような話ですって。


 みなさん、判子って使います?

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