190カオス 見識のあるひと
菅内閣の支持率が下がっているという世論調査の結果が出ています。そりゃ下がるよ。新型コロナ感染症への対応を見ていると。今日、施政方針演説があったけど、最初で最後の施政方針演説となるかもしれません。
今回は政治向きな話です。
興味ない人はスルーしてください。
『独裁の世界史』(木村凌二 NHK出版新書)って本を読みました。タイトルに「独裁」とあるので、世界史上の独裁者についてあれこれ書いてある本なのだろうと見当をつけて買ったのですが違いました。
ギリシャ、ローマ時代の政体を振り返りながら、どういった政体がその国の人にとってより良い政体なのだろうかということが書いてある本でした。
「独裁の本じゃないよなー」
いったいに「新書」っていう本は、タイトルが内容を表していないことが、ままある書籍形態です。売らんがために編集者が勝手にタイトルを決めるのでしょうか。なんとかしてほしいです。
さて、この本のなかで著者の木村凌二さんは、望ましい政体として「共和政」を挙げています。木村さんのいう「共和政」は「民主政」とは異なります。
ひとりの君主に権力が集中する「君主政」でなければ、一般民衆が直接または間接的に多数決で政治を行う「民主政」でもない。一定のエリート層による合議で政治を運営する「共和政」こそもっとも望ましい政治形態である――という主張でした。
結局、「君主政」は独裁へ、「民主政」はポピュリズムへつながるというわけ。
ローマの「元老院」が「共和政」を担うエリート層の典型だというのですが……。うーん。うなずける部分もあるけど、どうだろ。
一部の人々に特権的な身分(まさに貴族)を認めるというのは、難しいなあ。心情として非常に抵抗があります。ただ、じっさいに「とてもお金を持っている人」と「あまり(ほとんど)お金を持っていない人」の格差はどんどんと広がっていて、名称もなければ、見えもしない壁(身分の壁)がますます高くなっているような気はしますね。
この本が、一部のエリートに政治を任せようと主張するのは、アリメカにドナルド・トランプという大統領が生まれたことが大きく影響しているように思いました。
トランプ大統領は、先日、支持者たちによる議会乱入事件を扇動するなど、指導者としての資質に大きな疑問符のつく人物です。木村さんがこの本のなかで、指導者には見識が求められる(それは『ノブレス・オブリージュ』を備えたエリートが相応しいと木村さんはいうのですが)というのは、トランプ大統領のでたらめな政治を見たからでしょう。
また、この本が「民主政」ではなく「共和政」が望ましいとするのも、トランプ大統領がアメリカの「民主政」が生んだポピュリスト政治家だと断じたからにほかなりません。
その上で、新型コロナ感染症の感染拡大が続く、現在のような非常時には、ローマのような「独裁官」を選任し、一時的に権力を一元化、いわゆる独裁を許した方が、政治の意思決定がスムーズに行えると主張します。
新型コロナ感染症に効果的な施策をなんら打ち出せないこの国の指導者を見ていると、「民主政」の手続きのまどろっこしさと、生ぬるさにはイライラしますから、「独裁官」というのらは魅力的です。でも、一時的で済むかどうかわかんないですから、危険だなあ。むしろ、一度手に入れた権力を時期がきたから返納します――ってそんな人のいい政治家いないでしょ。無理があるなあ。
あー、なんかぐだぐだしたこと書いてしまった。なんかすみません。
ツッコミどころは満載のこの本ですが、正しいこともきちんと書いてある。
それは「君主政」であれ、「民主政」であれ、「共和政」であれ、たいせつなの指導者の資質だということです。「見識」が必要だと。だれかほんとうの見識ある人がこの国の総理大臣をやってくれないだろうか?
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