186カオス 広告をみて思ったこと

 ひさしぶりに「100分de名著」ネタです。


 令和3年1月のNHKEテレ「100分de名著」はマルクスの『資本論』です。おもしろそうなので、さっそくテキストを買いました。


 まだ、テキストを読み終えていない(Eテレの番組自体はあまり見ない 笑)ので、内容については後日書きますが、今回はテキストの裏表紙について少し書いてみたい思います。


 NHKテキストの裏表紙は、広告が載っています。その月によって広告の内容はさまざまですが、今月は株式会社オーエム「宅配プリント」の「スマート自分史」の広告です。


 ――あなたの自分史をお作りします。


とのコピーとともに、「3つの特徴」というものが謳われています。


① 原稿用紙は無料でお届け!

② すべて手書き入稿OK!

③ ページ構成一切不要!


 これって……魅力的……なのか?

 いやいや、肝心なのはお値段です。どうせ自分史を作るなら豪華なハードカバータイプで作りましょう。タイトル文字は金箔押しだそうです!


 10冊 239,491円

 30冊 282,876円

 50冊 317,988円  すべて税込


 ……。

 これを高いと見るか、安いと見るかは人それぞれ違うと思いますが、わたしは自分史って高いんだなあと思いました。


 どんな人が作るんだろう。自分史。

 仮に24万円払って、10冊の自分史が出来上がったとする――1冊は自分用として、あと9冊どうするのだろう。どこのだれが、わたしの人生を迷惑がらずに受け取ってくれるかと考えてみるが、まったく思い浮かばない(笑)


 わたしは、この広告を見るたびになんだか悲しくなります。以下、わたしの妄想――。


 広告にある「3つの特徴」から分かるように、自分史のターゲットはパソコンスキルに恵まれない高齢者でしょう。70歳代くらいかな。


 息子や娘は独立して別の家庭を持っている。だんだんと自分の老い先短いことが実感される年齢になり、ふと自分が死んでしまった後のことを考えると、なにか生きてきた証となるものを子供や孫たちに残しておきたい……。


 そうだ、おれの「自分史」を作って残そう!


 自己の人生に、ささやかな誇りをもっている人――かつては、社会的な地位があった男性が多い――は、自分の人生を肯定的に考えたがるものだ。「おれの人生には意味があった」と。

 じつはそれが、「おれの人生は無意味だったのではないか」という猜疑心と表裏一体の関係にあるのだとは気づかずに……。


 かくして自分史は作られるわけだが、所詮は「おれの自分史」であって、もらった人が読んで楽しい種類のものではない。


 迷惑そうに受け取る子どもや孫たちの態度を目の当たりにして、おじいさんは良かれと思って作った自分史が少しも子どもたちから歓迎されないことに傷ついてしまう。


 人生70を過ぎてまで、なぜこんな仕打ちを受けなければならないのか、おじいさんは打ちのめされます。悲しくて寂しいことです。残念ながら。。。


 って妄想しすぎでしょうか。

 そんなこんなで、わたしは「自分史」の広告を見るたびにうら寂しく、いたたまれない気持ちになるのでした。そして、寂しい老人の心の隙間につけ込む、この手の商売の抜け目なさに嘆息するのです。


 あなたなら「自分史」作ろうと思いますか?

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