182カオス たたかうひとへ


 今年から来年にかけての年越しは、例年になく寒くなるそうです。天気予報をみると、雪が降るとの予報も。みなさん、準備しておきましょう。


 さて、この寒い年の瀬、コロナの勢いが止まりません。わが兵庫県では一日の感染者数が過去最高を更新しました。東京でも800人を超えたままです。


 わたしの周囲で、コロナに感染したとか、重症化して入院したとか、そういう話は聞きませんが、わたしが目にしない、聞こえないだけで、大勢の人がこの感染症で苦しんでいるのだと思うと、くらい気持ちになってきます。


 こういう感覚、以前にも感じたことがあります。


 もうすぐ10年になりますが、東日本大震災に襲われた日、濁った大津波に東北の大地が次々と飲み込まれてゆく映像をテレビで見たとき。


 ――いま、大変なことが起こっている。


大勢の人が、家を失い、家族を失い、健康を損ね、命をなくしてゆく。東北の地を巨大な悲しみが覆ってゆくように見えました。


 わたしはそれをなすすべもなく、ただ「見ている」だけでした。この悲しみを少しでも軽くするためになにかしなければならないのではないかという焦燥感に駆られ、しかし、大きすぎる不幸の前にできることなど何もないと無力感に苛まれました。


 コロナの感染症で苦しんでいる人に対しても、同じようなことがいえます。わたしはそうした人に対して無力です。感染症一般について対策を語る言葉はたくさんあっても、患者さん個人にかける言葉はひとつも持ち合わせていません。


 どんな言葉をかけても、本人の辛さや苦しさの1パーセントだって肩代わりすることはできないのです。


 ――がんばってください。

 ――きっとよくなります。


 なんて空々しく無責任な言葉でしょう。きっとがんばっているはずなのです。本人自身がきっとよくなると思いたいはずなのです。未来が見通せず、不安に陥っている人にかける言葉ではありません。


 でも、とても心配している、なんとか力になってあげたいという気持ちだけは確かにある。わたしは沈黙のなかにその言葉を探し続けるのです。


 あなたのことを大切に思っていますと心の中で思っていても、言葉は不自由で思いを伝えるのは、とても難しいことです。いま、たたかい、苦しんでいる人がいたら伝えたい。言葉にならない言葉で、あなたを支えようとしている人たちがこの世界にはいる。あなたはひとりでたたかっているわけではない。

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