153カオス 脱はんこブーム

 なだれをうったような「脱はんこ」ブームですが、みなさん、判子、印鑑使いますか? 意外に使わないのでは??


 コロナ禍のなか、一部の企業で行われたリモート勤務が一躍脚光を浴びました。


 パソコンを使って在宅のまま仕事をするって、80年代のパソコン誌に載ってた未来予想図そのままみたいでワクワクしますね。わたしの職場は旧来どおりの出勤を頑なに守り通していて、「リモート勤務? 異世界の話か?」ってなくらい縁遠いのが悲しいです。


 リモート勤務をしたくても、はんこを押さないといけないから出勤している――自粛期間中、なんどもこういう理由でリモート勤務が進まないという報道に接しました。あたかも、はんこ文化がコロナ禍に出勤を強いられる元凶のような伝え方でした(笑)そんなわけないでしょ。世の中もっとフクザツです。


 はんこといえば、わたしは公務員、職場はいわゆる「お役所」で、はんこ文化の牙城であります。毎日、いろんな書類にはんこを押します。窓口に来られた方にもはんこを求めますが、むしろ内部資料に押す印鑑が膨大な量ですね。

 意思決定における責任の所在を明確にするため、または、それとは逆に責任のありかを曖昧にするために、役所というところはその人の意思表示のしるしとして押印を求める文化が根付いているところです。


 利用者の利便性の向上と負担軽減のための、脱はんこは加速すると思いますが、役所内部の意思決定の場から、はんこがなくなるのはまだだいぶ先になると思われます。それほどまでに、「紙の書類に印鑑を求める」文化が組織の体質として染み付いてしまっていると感じます。


 わたし、はんこは好きですが、やたらと押印を求める役所文化は好きになれないですね。上司の決裁印をもらうために、大勢の大人が行列作って並ぶなんて、コントかっ! と思う。上司は部下を並ばせて気持ちいいかもしれないが、無益な権威主義には辟易する。


 と、自分の職場をディスるのはこのくらいにしておいて、わたしとはんこについて。


 繰り返しますが、はんこ自体は好きなのです。印章の文化は歴史があるじゃないですか、日本史の教科書には「金印」って載ってるでしょう。


 ――漢委奴国王(漢の委の奴の国王)


ってやつ。また、卑弥呼も「親魏倭王」という金印を魏の皇帝から授かったとか。


 はんこには、権威と歴史があるんですよね〜。心底から庶民のわたしは憧れますな〜。


 はんこといえば、自動車を買うときに「実印」を作る人、多いんじゃないですか? 市役所に印鑑登録してあるアレです。はんこ文化の象徴、この「実印」も、この脱はんこの嵐に飲み込まれてしまいそうですね。ま、その人がその人である証を印鑑に求めるなんて、冷静に考えればナンセンスですもんね。


 はんこ好きのわたしは「実印」を作ったときに、「蔵書印」まで作りましたよ。蔵書印って知ってます? 自分の本であることを示すためのはんこです。


 ――藤光蔵書


って(笑)当時は「カッコいい」とひとり悦に入って、持ってる本に押しまくってましたが、わたしの蔵書はほとんどが文庫本で、蔵書印には不釣り合い。いつも間にか使わなくなってしまいました。第一、BOOKOFFで売ろうとするなら、蔵書印がある本は引き取ってもらえないんですよね、とほほ。

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