148カオス なぜ小説を読むのか

 さんざんエッセイを書いているわたしですが、ほんとは小説を書きたいし、書いた小説を読んでもらいたいんですよね。みなさんもそうだと思うのですが。


 ただ、読んでもらえない?


 SFを書いてるから? カクヨムではSFは読まれないのかなあ。いや、SF以外にも書いてるんだけどなあ。それも読まれない……。


 もやもやしたところでPVが増えるわけでもなく、比較的すらすら書けて、なおかつ小説よりもPVの上がりやすいエッセイを書いてるわけです。 


 心ならずもエッセイを書いていると愚痴のようなことを書いてしまいましたが、エッセイも一所懸命書きますので、よろしくお願いします。


 さて、「SFを書いている」書いているわたしですが、今回はなぜSFを読む(書く)のか、SFのどこが好きなのかについて、考えたことをちょっと書くことにします。


 なぜSFを読むのか――


 わたしの場合、それは現実から目を逸らして、逃げ出すためだと思います。SFって、文芸のなかでも特に逃避性が高いんですよ。なんといっても「不確かな未来」が舞台ですから、とびきり絵空事でしょ。


 そんなの空想だろ! という時代設定と舞台装置のなか、演者(登場人物)がお芝居をするのがSFです。現実からジャンプした手の届かないところで繰り広げられる科学と空想の物語に、現実では満たされない思いを抱く小学生を物語世界へ連れ去ってしまうパワーを感じたんでしょうねえ。


 SFのどこが好きなのか――


 それは「装置」と「設定」です。

 装置というのは、ガジェット――こてんてきなものを引き合いに出すなら、ロボットとかロケットといった未来的、SF的なモノですね。ガンダムからドラえもんまでとにかくSF好きは、こうしたガジェットが好きで萌えるわけです。


 わたし自身、ロボットは大好きですし、いま書いている小説『新しい世界』でも、軌道エレベーターというガジェットを使いました。近未来、ロケットに代わる宇宙旅行の手段ってやつです。作中、その軌道エレベーターに愛称をつけたりして……たまりませんな! 楽しい。


 そして、SFっていうのは、いまではないいつか、ここではないどこかを舞台にしているので、現実世界とはちがうしくみで世界が動いているはずなんです。そのしくみ――設定を読み解いたり、考えたりするのが楽しい。


「設定厨」という言葉があります。世界観やキャラクターの設定をひたすら練ることに取り憑かれてしまった人のこと指すネットスラングですが、本格SFと呼ばれる小説は、さしずめ設定厨のためのSFジャンルといってもいいでしょう。


 ガジェット萌えと設定厨、ふたつのオタク気質の交わるところに、SFファンは生まれるのです。


 といったところで話は変わって、本をひとつ読み終えました。おもしろい……というか、意外だったので感想を書いておきます。


『第四間氷期』(安部公房 新潮文庫)


 わたしが小難しい小説(わたしはこれを「純文学」と呼んでいます)を意識して読むようになったのは、四年ほど前からですが、このジャンルに関する文章を読んでいると、必ず出てくるのが三島由紀夫、大江健三郎、そして安部公房です。昭和の文豪ってやつ。(大江さんは、平成にも沢山書かれてますが……)


 現代文学は、まったく興味がなかった(小難しくて読む気もなかった)のですが、現代作家さんは好きかどうかは別として、一度は読んでいるようなので、「じゃあ、読んでおこうかな」と思って読んでいるのです。


 安部公房は、最初に読んだ『砂の女』が意味不明で心が折れましたが、『箱舟さくら丸』の文章にとても惹かれて、いいなと感じ三冊目を手に取ったのでした。


『第四間氷期』は、本格SFでした。

 安部公房がSFを書いているというのは、SFファンのあいだで知られていることではあるのですが、しょせん文豪の手慰みなんだろうと思ってました。


 事実は、ガチSFでした(笑)

 AIと新人類と大洪水の話でした。「さくら丸」と箱舟つながりキター! って感じですね。なんのことやら。


 安部公房は、いまでいうガチオタですよ多分。ガジェット萌えするし、設定厨なのも間違いない。ただ、読んでいるとそれ以上に、人間存在そのものにときめいていると感じる。エンタメじゃない。


 だから人について掘り下げて描いてしまうし、ただのオタクであるSFファンは引きますね。この熱量から距離をおこうと思うんじゃないですかね。


 結論としては、意外にもおもしろかったんですよ(笑)もう少し安部公房も読もうと思いました。あ、つぎは大江健三郎を読もうと思って買ってしまっています。ストレス解消のために本を買ってしまうんですよね〜。積読つんどくを読んでいかなくてはなりません。ではまた。

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