142カオス リテラシーってなんだ?

 何年か前に別サイトで書いていたときのこと。作品へのコメントで「あなたの小説を読むにはSFリテラシーが必要ですね」と言われたことがあります。書いていのが、SFだったんでしょうね。


 リテラシー?


 リテラシーとはなんぞや。聞いたことはあるような気がするのですが、自分自身使うことなく、スルーしていた言葉だったので調べてみると、


 読み書きの能力(識字率)


とありました。ニュアンスは伝わってくるのですが、いまひとつぴったり収まるという感覚からは遠いです。もう少しつっこんで調べてみると、


「なんらかの分野で用いられている記述体系を理解し、整理し、活用する能力」


と出てきます。これだ。わたしがコメントされたリテラシーとは、このことでした。


 わたしの場合、書くSFはライトでなものがほとんどですが、ハードSFとなると科学的専門用語も多く、一気にハードルが上がります。SFを読むのにSFリテラシーが必要だというのは、本当にそうだと思います。わたしもハードSFには理解が追いつかないですもん。で、コアなSFファンというのはその辺りにたむろしてるんですよね。こわいこわい(笑)





 ところで『カラマーゾフの兄弟』を読み終えました。一年以上かかったかなあ。このエッセイでも、これまで二度ほど読んでることを書いてきました。


 そこでは「おもしろくない」とはっきり書きましたが、スミマセン。訂正します。


 めっちゃ、おもしろいです。

 傑作!


 今朝、通勤電車の中で読み終えたんですが、ラストシーンで泣けてきて困りました。マスクのおっさんが通勤電車で泣いてたら……不審者やん!


 そのくらい感動したわけです。


 ただ、わたしの場合、から『カラマーゾフの兄弟』の内容を半分も理解できていないのですから、この小説がいかに巨大な感動エネルギーを内蔵しているか分かろうというものです。


 そうなんです。わたしには古典文学を理解するだけのリテラシーが不足していると、読んでて痛感しました。


「なるほど得意げにドストエフスキーを語りだがるわけだ」


 これは知識、教養、感性を高いレベルで持ってないと、手も足も出ないですよ。これを読めるのはインテリのしるしといっていいかも……。わたしは亀山郁夫さんの読書ガイドと「100分de名著」のテキストを杖になんとか読み終えることができましたが、予備知識なしに手を出していたら、第一巻の最初で読むのをやめたでしょうね。


 ロシアの歴史や宗教観、思想はもちろん、ドストエフスキー個人の生い立ちなど、『カラマーゾフの兄弟』を理解するため必要なリテラシーを構成する要素は数多くある反面、わたしたちはこれらの要素にほとんど馴染みがありません。手強いです。


 さきのSFファンの話ではありませんが、コアなドストエフスキーファンというのは、すごいリテラシーを装備してるんでしょうね。こわそう……。


 古典文学に限らず「文学」ってのは、読者にリテラシーを求めるんですねー。ぼうっと読んでても分かるようには書かれてない。

 普段からとぼけてるわたしにとって、かなり困難な作業でした。でも、結局は最後まで読めたんだし、おもしろかったんだからここは素直に喜んでおこう――と気分のよい藤光でした。


 つぎは肩の凝らない本を読もうと思います。ではまた。

 

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