128カオス プロの時間の使い方
コロナ禍のなか、上橋菜穂子さんの『鹿の王』読みました。
『鹿の王』には、いくつか読みどころがあります。そのひとつが、作中で「黒狼熱」と呼ばれる伝染病から患者を救うため、医師たちが奮闘する場面です。コロナ禍のなか読んだこともあって、わたしとしては、この本の一番の読みどころと思うのですが、ただひとつ残念なことがあって、この場面、物語の比較的前の方に位置しているんですねー。物語の後半にやってくる山場はアクションシーンなのですが、この医療場面の描写なら、物語の山場も支えられたなあ――と読み終えてから思いました。
あと『精霊の守り人』シリーズや『獣の奏者』シリーズでも描かれた、国同士の争いや駆け引きについても、この『鹿の王』はさらにパワーアップしてます。上橋菜穂子さんって、きっとこういう架空の国同士の政治、外交ってものを描きたいタイプの作家さんなのだろうなと思いました。こういうの考えるのって楽しいですからね。考えはじめると、執筆そっちのけで夢中になって設定を練ってしまったり……。読む方も気合を入れて読まないと、消化不良に終わりそう。
あとがきによると、上橋さんは、この『鹿の王』を書くのに三年かけたらしい。構想を練って、資料を集めて、取材をして執筆ですからね。それくらいかかるのでしょう。
それに引き換え、わたしの小説は……。
構想は単なる思いつきだし、資料はWikipediaで眺められるものだけ、実地の取材はゼロで執筆に取りかかりますからね。そりゃあ、うすっぺいものにもなるはずです。
三年かあ……。プロの作家が構想・取材に三年かけて書いてるんだから、わたしのようなアマチュアなら何年かけてもかけ過ぎってことはないんでしょうね。もっと腰を据えて小説に向き合わないといけないのかもしれないと感じました。
でもねえ。三年ですよ。
一作書くのに三年。
ヒットして本屋大賞も受賞したからよかったようなものの、書いてもまるっきり売れなかったかもしれないわけですから、プロの作家ってほんとうに厳しいと思います。
えっ、プロの作家になろうとしてるんじゃないのかって? うーん。そういわれればそうなのかもしれないんですけど……我がこととは考えられない。だって読まれな過ぎなくないですか?(笑)
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