126カオス あなたの「?」は大切なものだ
わたしは本好きとは言いながら、新刊の本を買うということがあまりないという種類の人間ですが、この間発売されてすぐの本を買いました。
『別冊NHK100分deナショナリズム 』
このお正月にEテレで放送された番組「100分deナショナリズム 」の書籍化ですね。「本にならないのかなあ」と楽しみにしていたのが、やっと書籍化されて即買いしました。おもしろかったです。
番組自体は、YouTubeにアップされていたのをなんども繰り返しみて(聞いて?)ました。番組で取り上げられた名著は四つ。それぞれ解説してくれる人とあわせてあげてみるとこうなります。
① アンダーソン『想像の共同体』 …… 大澤真幸(社会学者)
② マキャベリ『君主論』 …… 島田雅彦(作家)
③ 橋川文三『昭和維新試論』 …… 中島岳志(政治学者)
④ 安部公房『方舟さくら丸』 …… ヤマザキマリ(漫画家)
四つのなかで、一番おもしろいのは『方舟さくら丸』。この番組をみてから実際に買って読んだこともあって、とてもおもしろい。ナショナリズム の視点から読めるのはもちろん、オタク性癖をもつ男の妄想小説と読むこともできるなど、いく通りも読み方があるという深みがハンパない小説だった。
この『別冊NHK100分deナショナリズム 』に関していうと、『想像の共同体』を解説した大澤真幸さんの文章がやばいです。ネーション(国民)とナショナリズム の成り立ちを説明しようとする『想像の共同体』が目からウロコな名著であると解説する大澤真幸さんの書きっぷりがいい。また、こんな時代にわたしたちはどうあるべきか、という大澤さんの人となりが伝わってくるよい文章だと思う。
あと中島岳志さんの解説もいい。中島さんは、穏健な右翼ともいうべき人だと思うけど、昔は右翼的言説を研究しているというだけで、まともなメディアからは締め出されていた。進歩的(左翼的)考えを持っていなければ言論人にあらず、という空気がこの国の論壇を覆っていた(ただなかにいたわたしたちはほとんど気づかなかったけれど)。それがNHKで極右思想家の解説をするようになるとは、21世紀にはいって時代は変わったとわかる解説です。
いまの時代の政治を読み解くキーワードは、ナショナリズム とポピュリズムです。なんでこうなっちゃったの? ナショナリズム ってなに? という人にはおおすすめ――だけど、こんな本に興味があるというだけで、後ろ指差されそうな世相ですからね、コワイコワイ。
でもねー。「なんでなん?」という疑問は大切にしないといけないと思うんですよ。そうした「?」には、わたしたちの本質に関わるなにか隠れてる。それは良い悪い、好き嫌いを超えた「考える種」のようなもの、ヒトを人たらしめているものというかなんというか。
補足。もう一つのキーワード、ポピュリズムについて「ポピュリズムってなんやねん」と思われる方は、水島治郎『ポピュリズムとは何か』(中公新書)、「100分de名著 オルテガ『大衆の反逆』」を読むとある程度まで理解が進むと思います。おもしろいです。おすすめ。
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