105カオス ほんとうに怖い話とは
宮部みゆきさんの『あやかし草子 三島屋変調百物語五之続』(角川文庫)を読み終えました。宮部さんの時代小説は最高ですね。のどごしが良いというか、ぐいぐい読んでいくことができます。この『あやかし草子』も、とてもおもしろかったです。この百物語も、この巻で第一期完結らしいです。読む前は知らなかったので、驚きました。
――えっ。マジで? じゃあ次からどうなるの。
ネタバレは避けたいので、知りたければ本買って読んでください。
この本では、最初に収められている「開けずの間」というエピソードが一番おもしろいですね。最恐のエピソードです。
そう、怖いんですよ。めちゃ怖い。読んでで「もう、やめて〜〜‼︎」ってなります、ホント。このエピソードを読むと、世の中で一番怖いものは「人の想い」だということが、ようく分かりますよ。読んだ後、ぞっとします。
あとのは怖くありません。冒頭に最凶のが出てくるので、あとは余裕です。存分にミヤベ節を楽しんで読むだけです。
前にも書きましたが、宮部さんは「悪」に取り憑かれた作家だと思います。ミステリ作家としてキャリアをスタートさせ、自分の小説のなかにたくさんの犯罪者を描いてきた宮部さんが、なぜ人は悪事を働くのかという問いに答えようとした結果、「悪」そのものを描くようになったのだと思います。
『あやかし草子』は、現代を舞台にしたミステリではなくて時代小説なのですが、舞台を江戸時代に移したことで、より宮部さんの意思が明確になっているような気がします。「開けずの間」のエピソードにあるように、人の一番怖い部分は「想い」だと宮部さんは考えており、自分にないものを持っている人を妬んだり、自分の思いどおりにならないことを憎んだりするネガティブな感情こそ、悪意の源泉と描いています。
人のことを妬んだり、憎んだりしたことのない人はいないはずなので、これはだれもが悪の陥穽におちいる可能性があるということを示しています。
この物語がとびきり怖いのは、そのためだからではないでしょうか。おお、コワ。ブルブル……。
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