100カオス カクヨム に書き続けるわけ

 このエッセイもどうやら100話の節目を迎えたようです。100話だからなんだって、なんてこともないのですが、せっかくのキリ番をスルーしてしまうのも、筆者としてはどうかと思うので、100話をきっかけに思うところを書いてみようと思います。


 さて、このエッセイ。2019年の9月28日から書き始めていて、ざっと9ヶ月ほど経ちます。全99回、☆は9人からいただいた26個、12フォロー、総❤️646、総PV2276。これが多いのか少ないのか、人によって基準は違うと思いますが、少ないですね。私はもっと読まれたい。


 私の場合、1エピソードのために実際に費やす時間は1時間から2時間くらい。その前に頭の中でネタを結構練りますから、何日かかかったりします。毎日更新できないのは、その期間中の空き時間では、エピソードがまとめられなかったためです。9ヶ月間、エッセイのことは考え続けているといっても大げさではないでしょう。9ヶ月で2276PVは少ない、労力に比べて割が合わない!


 あー、これは私の願望ですから。みなさんにとって役に立つとか、おもしろいとかそんなことを訴えるつもりはまったくないです。「せっかく書いたのだから読まれたい」単純にそう思うだけです。


 しかも、これでもこのエッセイは私の書いたものの中では比較的読まれている方なんです。心当たりのある人も多いと思いますが、カクヨム ではんですね。確実にそういうタイプの作家さんはいます。そういう人はほぼ確実に、と考えています。もちろん、私もそうです。


 ――苦労の度合いが違いますもん(関西風のイントネーションでお願いします)。


 エッセイはあまり構成を考えずに書くんですよね。凝る時もありますが、基本的には頭にあることをだーっと吐き出して、面白おかしく書く。おわり。

 そこには読み手に対する信頼がある。共通の理解とか共通の経験、「こういうのってありますよね?」というベースの上に文章をのっけるので、非常にペンがスムーズに進みます。読む方も読みやすい。


 小説はそういうわけにはいかない。小説は頭の中をだーっと出しちゃだめ。小説の一番肝心なものはカタルシスだから、肝心なところは作者の心の中だけに隠しておかなくちゃいけない。ある種、読者をペテンにかけなければならない。

 勢いのまま小説の序盤でトリックをばらしたり、犯人が分かってしまうミステリ小説なんておもしろくないでしょ。物語の山場で巧妙なトリックや意外な犯人が明らかになるから「あーっ、そうだったのか!」という目の前の霧が晴れてゆくようなすっきり感を味わうことができる。作者は、読者をそこまで連れていくのが仕事で、小説の中でそうした「肝心なところ」というのは、簡単には読者に気づかれないよう巧妙に隠しておかなければならないのです。


 ――めんどくさ!(関西風のイントネーション……くどい?)


 とにかく面倒くさいんですよね、小説を書くのって。そのうえ、「出来の悪い子ほど可愛い」ってやつで、ささっと書いてしまうエッセイより、あーでもないこーでもないと四苦八苦して書いた小説の方が、作者として可愛い、値打ちがある、評価するならこっちの方を評価してほしい――と感じるからタチが悪い(苦笑)。


 こうした愛着のある小説が読んでもらえない(PVが上がらない)というのは辛いです。無視されるというのは、存在しないことに等しい。時間と情熱を傾けて作り上げた物語をないことにされてしまったと感じてしまうと、自尊心を傷つけられとても腹立たしい思いをします。カクヨム から小説を削除してしまうこともあるでしょう。私もそうしたことはありますし、気持ちは分かります。


 ――なんで読んでくれないんだ。

 ――もっと読んでもらえるシステムにならないか。


 ただ、問題の本質はカクヨム というシステムにあるのではなくて、自分自身の中にあると気づくべきです。世の中にあまたあるWeb作家の作品に。PVを集めるから尊いわけではなく、ましてPVがないからといって卑しいはずはないのです。ヘッタクソな文章で書かれた小説ひとつひとつの中に、その人なりの小説に対する思想や信条、憧れといったものが書き込まれていることは、丁寧に読んでいけば必ず読み取れるはずです。PVの多寡に惑わされず、自分自身が書きたいことを自身の技量のすべてを注ぎ込んで書けばいい。これこそプロにはない、アマチュア作家だけの特権です。それを保証してくれる場がカクヨム をはじめとする小説投稿サイトだと考えれば、感謝しこそすれ「システムが悪い」などと考えることはなくなるでしょう。


 ――それでもコメントやレビューがあった方がうれしいんだけど……。


 もちろん、そうですね。こう考えてみましょう。あなたのPVはいつまでたってもゼロですか? そんなことはないはずだ。私のエッセイも読まれないとはいえ、10そこそこのPVは稼いでいる。しかも9ヶ月間も連載して10です。昨日今日カクヨム に登録したばかりの作家さんに読者がつかなくても不思議はありません。

 私のエッセイの10は、閲覧スパンの長短はあれ、固定の読者さんです、きっと。でなければ10もPVが集まるわけがない。レビューもコメントもいただけない人が大半ですが、こうした「サイレントリーダー」とでも言うべき人たちこそ私の小説の読者さんだと思っています。


 私はコメントをつけにくいことをエッセイでも、小説でも書き続けていて、「絡みにくい書き手だなあ」「逆に絡まれでもしたらややこしいぞ」と思われているだろう自覚がある。それでも読んでくれる人は私の宝物です。いつもありがとうございます。サイレントで一向に構いません(笑)


 そして、このエッセイから私の書いた他の小説に手を伸ばしてくれる読者さんも少数存在します。こうした人が、本当の意味で私の読者さんです。こうした人は、私の書くもののなにかを気に入ってくれて、わざわざ私が書いた別の小説に手を伸ばしてくれるわけです。そこには「藤光が書いたもの」という共通点しかないわけですから、そういう理由で読んでくれる人はこのエッセイが好きなのではなく、私(の文章)に興味を持ってくれているはず。そう考えると、私はカクヨム には感謝しかありません。ありがとうカクヨム 。ありがとう読者さん。私が書くのはあなたのためです。


 カクヨム で書き続ければ、いつかその人にとっての「あなた」が見つかるはずだ。そうした人をもつ人生と、持たない人生とどちらが豊かなものか、それはいうまでもないことです。さあ、そうと分かれば新しい物語を書き始めましょう。新しい読者があなたを待っています!

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