96カオス 上達のため必要なもの

 ここ数年のあいだ、ずっと考えつづけていることがあります。「どうすれば、もっと上手に小説を書けるようになるだろう」ということを。


 上達するためには書き続ければ良いというのは、エッセイのどこかに書いたような気がするし、実際に書き続けることがいちばんの上達方法だと確信しているのだけれど、なんでもにかかっている私は(私に限らず現代人はみんなこの病気にかかっているのでは?)、もっと手っ取り早く小説上達のコツはないだろうかと、小説を書かずにあれこれ考えてしまうのでした。


 いくつも小説を読むうちに、小説を読んだり書いたりするのには、そのために必要な能力というものがありそうだということに気づいてきました。大したことではありません。


 ――いまさら気づいたのかよ。


 って感じの発見です。今回は、少しそれを書きつけることにします。


 必要な能力① 『知識』

 身も蓋もなく言ってしまうと、小説を読もうとするとき、読む人が持っている知識の量に比例して、小説は楽しむことができるようです。歴史小説を読むためには、歴史に関する予備知識を持っている人の方が、よりその小説を楽しめそうです。ハードSFなら、科学的知識がない人が読んでも意味がわかりませんし、異世界ラノベですら、ファンのあいだの暗黙知を了解せずに読むと「なんのこっちゃ」と作品の意図を読み取ることができないはずです。小説を読むというのは、とても知的な行為であって、文字が読めるだけでは小説を楽しむことはできないのです。


 必要な能力② 『感性』

 小説を読むために重要なものは感性です。感性は「興味の向かう方向」といっていいかもしれません。恋愛小説を読んでどきどきしたり、ファンタジーを読んでわくわくするのは、読む人の持つ感性と小説の内容が共鳴した結果だと思います。するどい感性を備えた人ほど、より深く小説を楽しむことができる人といっていいのではないでしょうか。


 必要な能力③ 『教養』

 同じ小説を読んでも、人それぞれに感想がちがうというような経験をした人は多いと思います。それは人それぞれに持っている教養の違いからくるのではないかと私は考えています。ここでいう教養は、単なる学歴とか頭の良さとは関係ありません。その人のもつ知識や経験、置かれている環境などからくる『人生観』のようなものです。小説を読むときに、人は自分自身の『教養=人生観』のフィルターを通してその内容を受け取るのです。深い教養をもつ人ほど、小説がもっている多様なメッセージを受け取ることができるように思えます。


 小説を書く人――プロの作家さんというのは、上に書いたことに対して、自覚的である人が多いんじゃないでしょうか。純文学に多いのですが、あからさまに読者に知識や感性を求めてくる小説があります(私もこういうのを書いてやしないかと反省してみます)。良し悪しではなく、太刀打ちできないなあと感じます。


 カクヨム 作家さんは、多くの場合アマチュアでしょうからプロのように意識する必要はないと思いますが、書こうとしていることについて下調べをする(①知識)、興味を持てることを書く(②感性)、アイデアを出し惜しみしない(③教養)くらいは心がけて書いた方がよいと思います。私自身経験があるのですが、②はともかく、①と③は手を抜いたり、出し惜しみしたりするんですよね。素人のくせに(笑)書いていて、もっと謙虚にならないと――と考えさせられました。ではまた。

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