82カオス たまには中身ではなく本を見てみる
どうやら新型コロナウイルスによる感染症に関して出されていた非常事態宣言が、39県で解除されそうですね。まずはよかった。もう、限界でしょ。息詰まりそうでしょ。今回のコロナ騒動のひとつの節目がやってきたという感じですね。
ところが、私は兵庫県在住なのでロックは解除されません。巣ごもり生活がまだしばらく続きそうです(もー、えーかげんにしてほしいんやけどね。兵庫県県民としても!)。なので、今日も在宅ワークという名の自宅待機を強いられています。
学校の宿題をしている息子の手前、寝そべってテレビを見るわけにもいかず、本でも読むかと思って手にとったのが、前回も書いた小川洋子の対談本とエッセイが一冊ずつ。一度読んだ本なので、どうしようかなあ(私は一度読んだ本はほとんど読まない)と文庫本をこねくり回していると、ふと気づきました。
――製本が違うなあ。
ひとつは文春文庫、もうひとつは新潮文庫です。文春文庫は、本の小口が三方ともきれいに裁断されています。対して新潮文庫は、小口の天(上側)が裁断されてなくて、でこぼこしています。
つい最近まで知らなかったのですが、新潮文庫のように本の小口、天の部分を裁断しない製本法を「天アンカット」といい、小口を三方とも裁断する製本法より、むしろ手間とコストがかかっているらしいのです。天アンカットを選択するということはわざとコストのかかる製本法を選んでいるのだと知って驚きました。
――手間を省くために、裁断していないのだと思ってた。意外!
私は高校生のころにSF読みとして読書キャリアをスタートさせたので、天アンカットにはなじみがありました。海外SFを出していた創元推理文庫、ハヤカワ文庫ともに天アンカットなのです。でも、当時は角川文庫(眉村卓や半村良のSFを読んだなあ、懐かしい)などのキレいな製本に比べ、「なんだか汚いし、貧乏くさいなあ」と思っていました。
出版社なりのこだわりがあって、天アンカットを続けているのだとしたら、文庫本にコストや効率を度外視した製本法をとる東京創元社や早川書房は、粋な出版社と言えるんじゃあないでしょうか。見直したというか、なんか目が覚めたような思いです。
ほかに天アンカットの本が、我が家にないか調べてみると、岩波文庫的(佐藤正午さんの本です)と中公新書がそうでした。
あとよくみると新潮文庫だけ、文庫本なのにしおり紐(スピン)がついてます。便利です、しおり紐。新潮文庫はざっと10冊ほどありますが、ほとんどのしおり紐が茶色の中にひとつだけ黄色のしおり紐がついてる本がありました。綿矢りささんの『ひらいて』です。なんでだ? これも本を作る上でのこだわりのひとつなんだろうか。
もっといろいろな本を集めたら、改めて本の作りや装丁について調べてみようと思います。おもしろい発見があるかもしれません、ではまた。
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