76カオス 中世ってすげーよな!

 うーん。退屈だ。

 このゴールデンウィーク、朝からお盆か正月かと思うほど道をゆくクルマが少ない。みんな外出自粛に努めてるんだなあと、この国の人たちの規律正しさに毎日驚いている藤光です。


 GWだよ? 連休なんだよ? みんなほんとに出かけないで自宅で巣ごもり生活してるんだ。そのモチベーションの高さはどこからくるんだろう。私は出かけられなくて、かなり参っているのですが、早くなんとかなってほしいです。


 出かけるにしても、がないのがまたつらい。実家に行って両親に会うわけにいかないし、買い物といったって食品売り場しか営業していません。本が買えないんだ! 私にこの連休をどう過ごせというの!


 ――そうですね。


 カクヨム で小説を読んだり、書いたりすればいいんでした。そのためのサイトなんですし……。でも、ネタもねえ、あまりないんですよね。


 などと、愚痴ってみても仕方がありません。小説エッセイ書きます。がんばります。


 私が書く小説は、SFテイストのちょっと不思議な話であることが多いのですが、実は時代小説や歴史小説にも興味があるんです。カクヨム にも一本あげてます。


 学生の頃、司馬遼太郎が好きになってからのことです。藤沢周平もいいですよね。池波正太郎もいい。……書き上げてみるとみんな故人ですね。吉川英治は……古すぎますか。そうそう、宮部みゆきさんの時代小説も好きですよ、とてもうまい。京極夏彦さんもいいなあ。


 ああ、作家さんのことが書きたいんじゃないんです。今回は小説の舞台について書いてみたかったんです。


 時代小説といえば、江戸時代、それも花のお江戸が舞台――とだいたい決まってると思いませんか。歴史小説ならNHK大河ドラマでも定番の戦国時代か幕末! 舞台はほぼ決まりですよね(笑)


 でも、テンプレの舞台設定をもった物語って安定感と安心感はあるけれど、カタルシスに欠けるような部分があると思いませんか。


「そうそう、そうだよね」や「それそれ、そうこなくっちゃ」というのが安定感のある物語の要素で、逆に「えっ、そうだったの?」とか「へえ、なるほどねえ」とかいうのがカタルシスを感じさせてくれる物語の要素(藤光個人の意見です)。


 あらゆる小説のおもしろさというのは、この安定感とカタルシスの絶妙なバランスの上に立ってると思うのです。


 で、私はこのうちカタルシス重視派でして、小説の中に新しい発見があるとうれしく、得した気分になってしまう性質を持っていたりします。なので、私が書く小説は、鉄板の舞台――戦国時代とか江戸時代、幕末を避けたいなあと思っています。


 いま興味があるのは「中世」。室町時代。室町時代ってわけがわからないんですよ。混沌としてる(このエッセイみたい)。私のもつ混沌としているというイメージは、手塚治虫の『どろろ』や司馬遼太郎の『妖怪』といった作品から影響を受けているのかもしれません。


 いずれにしろ混沌というところが魅力的で「なにかが起こりそう」じゃないですか。もっと能動的に書くなら「なんでも起こせそう」な懐の深さを中世という時代に感じます。


 呉座勇一『応仁の乱 戦国時代を生んだ大乱』(中公新書)


 数年前にベストセラーとなった『応仁の乱』ですが、この本、なぜベストセラーとなったのか不思議なくらい専門的なことが書かれています。三年前の私は、途中で投げ出しましたからね、難しくて。


 なにが難しいって、登場人物の多さとその弁別のしにくさが鬼畜級。


 例として挙げると、


(足利)義政、義視、義尚

(畠山)義就、政長

(斯波)義廉、義敏

(大内)政弘

(赤松)政則


などなど、名前だけ取り上げるとよく似てて見分けがつかない。そういった人たちが何十人と入れ替わり立ち代わり現れては、あるときは敵、あるときは味方となってお互いに争い続けるわけです。ややこしい。まさに混沌。ベストセラーって、ほんと?


 内容も、奈良・興福寺の僧の視点をベースに応仁の乱前後を描いているので、本の多くの部分が、奈良の位置する大和国(奈良県)の情勢を描かれており、中学の歴史レベルの知識しかない私には馴染みがなくて読みづらかった。


 ただ、難読だからおもしろくないわけじゃないですよ。この外出自粛の世の中、ありあまる時間を費やして読んでいくと、よく知らないからこそのカタルシスにも出会うわけです(笑)


 カタルシスのひとつは、やたらといくさをしていること。応仁の乱ばかりでなく、室町時代を通じて戦のなかった年などなかったのではないかと感じるくらい、各地で戦が起こっていることに驚きました。江戸時代と比較するとまったく別の国かと思うくらい、中世って戦が多い。それだけ(理念先行型社会ではなくて)実力先行型社会だったってことなんでしょう。アメリカファーストってか、自分ファーストな今の時代に通じるかもしれません。


 もうひとつは、畠山義就はたけやまよしひろという男を知ったことです。この男、幕府の重臣畠山家の家督(ボスの座)をいとこの畠山政長と争い、そのことが応仁の乱を引き起こすきっかけとなるのですが、手のつけられない暴れん坊です。とにかく応仁の乱前後を通じて各地で暴れ回り、戦の伝道者のような感じ。またこれが強い上に、負けてもあきらめが悪いんです。つねに周囲を振り回すダーティーヒーローですな(笑)すげえわ、義就。


 この本自体は、私の小説のネタにはなりそうもありませんでしたが、「やっぱり中世ってすげーな」と感じさせてくれる一冊でした。もっと鎌倉・室町時代を扱った本を読んでみたいなーと思っています。


 そのためには書店に行って本を探したいのですが、ずーっと臨時休業なんです。おーい、なんとかしてくれ!

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