64カオス 純文学はエンタメ化しているか

 私はここに小説の書き方について書いてきました。そして、小説の読み方についても。


 書くという行為は不思議なもので、読む人を想定して書いてはいるのですが、読む人のために書いているというよりは、自分自身の考えをまとめるために書いているという側面の方がずっと大きく、後で読み返してみると……


 ――ははあ。このとき、おれはこんなことを考えていたんだな。


 と自分が書いたことに、自分で感心していることを発見し、驚いたりします。


 いま私が考えていることは、についてです。


 カクヨム でわたしたちが書いている小説は、どういう人たちに、どう読まれているのだろう。


 私は小説の書き方について書いてきたのですが、それはどう読まれるのかという問題意識なしに考えてもあまり意味がないのではないかと改めて考えはじめたということなのです(いまさらながら)。




 さて。

 ここ一、二年というもの。「純文学を読んでみよう」と積極的に純文学の小説を読んできました。


 なぜかというと、あるとき見つけた動画(小説講座の動画だったように思います)の中で作家の石田衣良さんが


「これまでエンタメを読んできた人は、純文学を読んでみるといい。純文学を読んでいる人はエンタメを」


と言っていたことが理由のひとつ。いつも自分が読んでいるジャンルとは異なるジャンルの本を読むことで、作家として視野が広がるということでした。


 ――なるほど。


 エンタメ一辺倒だった私が純文学を読むようになったきっかけです。ただ……


 太宰治の『人間失格』を読んで「なんて暗いことを考えている小説なんだろう」とてんで受け付けなかった私です。はたして純文学を楽しめるのか。という不安がありました。


 結論として(まだ結論を出すのは早いかもしれませんが)、私の不安は的中。いくつも純文学小説を読みましたが、心の底から面白いと思えた小説は僅かで、ほとんどの小説は


 ――なんだかなあ。


という微妙な評価にとどまるものばかりでした。


 私の視野は広がったのか。


 それは確かに広がったように思います。いろいろな小説がいろいろなテーマに沿って、さまざまな表現を使って書かれているというのを知りましたし、とも感じました。エンタメと純文学の境界があいまいになってきていると。


 それは一方で、ライトノベルやカクヨム をはじめとしたWeb発の小説が、これまで読書界のエンタメ小説によって占めていた地位を奪い取りつつあることを示しているんだと思います(ということは、カクヨム 作家の未来は明るい?)。


 そして書くものが、なんとなく純文学よりになってきましたね(笑)ただ、私は「純文学」には否定的です。純文学に括弧を付けたのは、これに固執するというくらいの意味です。小説というのものはもっと柔軟で、いろいろな形をとっていいものだと。


 純文学を読みはじめて気づいたことは、「結局は、おもしろいか、おもしろくないかだけ。おもしろいと感じる小説のあり方は個人個人によって違うから、個人とって小説は、すべてエンタメといっていい」ということ。私は私なりのやり方でエンタメ小説を書いていきたいと強く思うようになったのでした。


 ――読み手にとって、純文学は当たり外れが大きい。


 人にはそれぞれ興味のあるテーマとか、面白いと感じるジャンルっていうのがありますよね。

 ミステリーとか、時代小説とか、SFとか、エンタメ小説がさまざまなジャンルに分かれているのは、読む人の好みに合わせる形で小説が整理、細分化されていった結果でしょう。なぜか。それは、ジャンル分けにしたがって自分の好みのジャンルを選べば、小説の当たり外れが少ないと分かったからでしょう。


 これに対して、純文学ってジャンル分けされないですよね。謎解きがあっても、江戸時代が舞台でも、ロボットが活躍してさえ、文芸誌に掲載されたり、芥川賞を受賞したりすれば、その小説は「純文学」なわけでエンタメ小説のジャンルに区分されたりはしない。


 わかりにくい!

 純文学って、わざわざ自分の周りに壁を築くようなことをして、読者を遠ざけているかのようです(笑


 私の書く小説は、わかりやすいものにしたい。わかりにくい純文学は、そのわかりにくさゆえにその小説全体が、なにか暗喩のように読めてしまって、一層わかりにくくなってしまいます(あくまで、私個人の感想)。だからエンタメ? そう。だからエンタメ。私はわかりやすいエンタメを書きたい。




 えっ、なにを書いているかとても分かりにくい? 失礼しました――

 

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