62カオス 文章のリズム
私はネットで小説を書くようになってから、5年あまり経ちますが、いまでも文章のリズムを整えるために何度も書き直しをします。
世の中には、心に浮かんだ言葉をそのまま紙に(ディスプレイに?)書き写したら、それが小説になります――なんて人がいるようですが、私に言わせれば、その人は怪物ですね。小説は、三歩進んでは、二歩下がる――を、えんえん繰り返しながらようやっと書き進めていくものでしょう?
カクヨム で毎日小説を更新している人もいると思うのですが、いったいどういう仕組みになっているのだろうと不思議です。そこにはなにか、からくりがあるのではないかと勘ぐってしまいます(笑)
さて、自身の遅筆を露悪的に開陳してみせたところで、だれが感心するわけでもありません。本題に入りましょう。
とにかく、小説を書くのには時間がかかります。その理由は、とにもかくにも一度書き上げた文章を何度も手直しせずにはいられないからです。
なかでも私が気にしてしまうのは、文章のリズムです。
心地よいと感じる語調や文章というものがあります。明確なルールや基準があるわけではないし、国語の授業で教えてもらえるものでもない。
でも、たしかにある。素直に耳に入ってくる言葉の流れ。
それを自分自身の文章の中に、ひとつでも多く取り入れたいと考えながら書くと、小説を書くというのはなかなか根気の必要な作業となります。
◯ 文末を整える。
文章のリズムを決める要素は、たくさんあってそれが複雑に絡み合っているため、「これさえ気をつければ大丈夫」というようなポイントはありませんが、あえてひとつあげるとすれば、それは文末をどう締めるかということになると思います。
文章は、ひとつのセンテンス(句点「。」で区切られた文)が、いくつもいくつも書き連ねられた形でまとめられています。
ひとつのセンテンスから次のセンテンスへの繋がり方、あるいはもっと多い複数のセンテンスを総体として眺めたときに、その文章――センテンスの連なりは、音楽的リズムを帯びてきます。それは文章を音読したときにより明らかです。
文章のリズムを性格づけするのは、その文末の表現です。このエッセイでいえば、文末に「〜ます。」を選ぶのか「〜です。」にするのか。
「ます」ばかりを選ぶと文章が単調になり、読みにくいばかりでなく、エッセイ全体が幼稚に思えてしまいます。「です」ばかりでも同様で、センテンスの繋がり方、複数のセンテンスのまとまりを見ながら、「ます」を選ぶか「です」にするか決めていかなければなりません。その結果として、文章にはリズムが生まれます。
そのリズムが心地よければ、私は「よい文章」と判断し、気分良くエッセイを書いてゆくことになります(笑)
逆にしっくりこないリズムであったときは、納得のいくリズムが生まれるよう何度も書き換える苦しみを味わうことになります。
これは「〜です、〜ます調」の文章だけでなく、「〜のだ、〜である調」や「〜した、〜する調」の文章でも同じことです。特に、小説でよく使う「〜のだ、〜である調」や「〜した、〜する調」の文章では、同じ文末が何度も繰り返されるだけで、なんだか幼稚な感じが漂うため、書き手はそれを避けるようになるものです。
◯ 繰り返しを避ける
繰り返しを避けるべきなのは、文末だけではありません。
連続していなくても、ある程度接近しているセンテンス同士に、まったく同じ言葉が含まれていると「あれ、この言葉さっきもでてきたな」という印象を読み手に与えてしまいます。
たとえば、このエッセイでは文章を推敲し修正することを「書き直す」と表現したかと思えば、「手直しする」としてみたり、「書き換える」と変えてみたりと、いろんな言葉で表現しています(探してみてください)。
これも繰り返しを避けたい――という私の思い込み(?)が文章にあらわれた箇所です。
該当するセンテンス同士が相当離れていれば、私も気にせずに同じ言葉の繰り返しを使いますが、接近していれば接近しているほど、繰り返しには慎重になります。
――文章のリズムが不自然でないだろうか。
――文章が幼稚になっていないだろうか。
――語彙の少ないことを馬鹿にされないだろうか。
病んでるのか! とツッコミたくほど、私は一度書いた文章をいじりますね(笑)それでも、納得のいく文章に仕上がることはなかなかありません。
いっそのこと文章のリズムなんて考えずに書いてみたらどうだろうと思わなくもないのですが……。私の書いたものの場合、そういう文章は死ぬほどつまらないんですよ。
推敲して推敲して――やっとそれなり。
これからもがんばります。
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