44カオス 文豪を読む

 去年、このエッセイを書き始めたころから『100分de名著』にハマっています。ただ、テレビで観ることはないので、もっぱらYouTubeで観る(か、寝ながら聴いてる)だけ。同じ放送を何度も繰り返し観てます。そして、何度観てもおもしろい。


 伊集院光さんのMCぶりがいい。絶妙。ときおり凄まじい切れ味のコメントを繰り出して、「指南役」の先生方を驚かせるのをみると、頭もいいんだなと感心します。オタク気質を隠さないところも好印象。ずっと『100分de名著』のMCを続けてほしい。


 さて、今朝も朝の支度をしながら、『100分de名著』の手塚治虫スペシャルを観ていたのですが、ぴーんときました。


 ――これって『BSマンガ夜話』だよな。


『BSマンガ夜話』って知ってますか?

 1996年から2009年まで不定期にNHK-BS2で放送されていた「徹底的にマンガを語る」バラエティ番組です。


 1995年には週刊少年ジャンプが653万部売れた(年間じゃないですよ、週刊ですから一週でです!)というマンガがもっとも元気だった時代の番組でした。


 この『BSマンガ夜話』と、『100分de名著』が似てる。番組のタイプは前者が「バラエティ」、後者は「教養番組」と異なりますが、作品を語り合うという番組の作法や、それによって視聴者の作品に対する理解が深まっていくという、知的好奇心が満たされてゆく喜びがあるところがそっくりです。人気番組には、こうした共通項があるものなんでしょう。


『BSマンガ夜話』には、「夏目の目」というコーナーがあります。そこではマンガをその描線やコマ割り、表現技法など「絵の書き方」から分析、批評していて、マンガコラムニストの夏目房之介さんが担当していました。かの文豪、夏目漱石のお孫さんです。


 夏目房之介さんのマンガ批評は、とても興味深くおもしろいのですが、それはまたの機会にするとして……。夏目漱石の『こころ』を読みはじめました。


 ――いまさら?


 たいそうな前振りの後に、いまさらな話で申し訳ない(笑)そう、いまさら『こころ』なんです。


 そもそも『100分de名著』のコンセプトが、いまさらな名著を手にとってもらうための番組――というものですから、これでいいのです。


 高校生の読書感想文の定番ですね。昔もいまも変わりません。国語の教科書で読んだという人も多いでしょう。私もそのクチです。


 読んだことはないのに、有名なので内容は知っているという小説ってあると思います。同じく漱石の『坊ちゃん』とか太宰治の『走れメロス』とかね。


 私にとって『こころ』は、そんな小説のひとつでした。教科書にとられた部分は知っているのですが、通して読んだことはない。まあ、それでいいと思っていた小説。


 でも、『100分de名著』を観てると読んでみたらどうなんだろうという思いがふつふつと湧いてきて、ブックオフへ探しに行ったのです(笑)たくさんありました〜。さすが読書感想文の定番だけあります。探すまでもなく何冊も書架に挿してありました。


 読んでみると、めちゃくちゃおもしろいですね。


 結末を知っているので、おもしろく読めないのかと思っていましたが、逆に結末を知っているがゆえに、序盤から張り巡らされた伏線がよく分かって、「漱石、うまいなあ。小説の作り方が!」とページを繰るごと唸りながら読んでいます。初めて読むのに、再読する感じが不思議です。しかも、おもしろい。


 再読に耐える小説こそ、よい小説といわれますが、『こころ』は間違いなくよい小説といっていいと思います。


 さすが。文豪の看板に偽りなし。


 読み直しって、おもしろいなあと感じながらこれを書いています。書き終えたら『こころ』の続きを読みます。では。

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