33カオス ひらくかんじ
漢字をひらく――って、知ってますか。
小説を書き始めるまで私はこんな言葉に出会っことがなく、知りませんでした。某サイトで小説を書き始めた頃、ある作家さんが読者の方から……
「漢字が多くて読みにくい。もっと漢字をひらいたほうがいいですよ」とアドバイスされているのを目にしたのです。
最初に読んだときは「??」と意味が分からず、固まってしまったのですが、前後の文脈から意味を推しはかると、なんとなく分かってきました。
「漢字をひらく」とは、漢字で書ける言葉をあえてひらがなで記述する表現方法をいいます。
たとえば、「兎に角」と書かずに「とにかく」と書いたり、「暫く」と書かずに「しばらく」と書くようなことをいいます。
漢字をひらくと、基本的には読みやすくなります。漢字は硬いイメージなので柔らかくもなりますし、優しい感じにもなります。また、女性的なイメージや幼いイメージを重ね合わせることになります。
あと、漢字が輪郭の立ったシャープな印象を持っているのに対して、これをひらくと輪郭線がぼやけ、ソフトでファンタジックな言葉へと印象が変わります。
このことから、読みやすい文章というのは、漢字とひらがなのバランスに負う部分もかなりの比重を占めるということが分かってもらえると思います。
ところで、なぜいきなり漢字をひらく話を持ち出したかというと、いま読んでいる本『レプリカたちの夜』(一條次郎 新潮文庫)の文章が、私の感覚とは漢字のひらき方がずいぶん違っていて、とてもおもしろいなと感じたからです。
まだ、おしまいまで読んでいないので、小説自体の評価はしませんが、とてもおもしろい内容です。
こことは異なる奇妙な世界で、奇妙な人たちが、奇妙な考え方のもとに、奇妙なことをする物語なのですが、この奇妙な小説の奇妙さを盛り上げるのに一役買っているのが、漢字のひらき方です。
「ほんもの(本物)」
「とくに(特に)」
「かんがえる(考える)」
「うごく(動く)」
たくさんある中からいくつか挙げましたが、これらの漢字は私なら開かない(開こうと思いつかない)ので、小説の内容と相まって、とても不思議な感じがします。文体からも奇妙な感じがします(笑)
『レプリカたちの夜』の文体はとてもみりょく的なので、わたしもこれからどんどんかんじをひらいていくようになるかもしれません――。
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