20カオス ハードボイルドとはなにか

 人生に、文学を。


 目にしたことがあるかもしれませんが、日本文学振興会が旗振りしているキャンペーンです。


 スマホばかり見て、本を読まない人が増えたことの危機感から「本を読んでもらおう、文学に接してもらおう」と出版社や作家から未知の読者へ繰り出されたアプローチのひとつ。


 あ、日本文学振興会とは聞きなれない名前ですが、日本でもっとも有名な文学賞である、「芥川賞」「直木賞」を選考している公益財団法人です。設立の経緯から出版社の文藝春秋と密接なつながりがあります。


 この――人生に、文学を――ですが、本や文学に親しんでもらおうと、本や文学をテーマにした公開講座を行なっていて、そこで現役の作家に本そして文学について講義をしてもらっています。


 この公開講座、youtubeで自由に視聴できます。


 私は、中村文則や小川洋子の講義の動画が好きで、これまで何度も繰り返し見たり、聴いたりしているのですが、最新の講義――大沢在昌の講義がとてもよかったのでここにメモしておきます。


 大沢在昌は『新宿鮫』シリーズで有名な作家ですが、私にとっては未読の作家さんです。

 書いているジャンルが「ハードボイルド」なのですが、私は小説としてのハードボイルドと架空戦記ものには、まったく興味がなくって、「人生に、文学を」公開講座の動画がなければ、一生触れ合うことはなかったかもしれません。


 ただ、この大沢在昌の講義、おもしろいです。何というのか、非常に魅力的。

 講義の内容は、大沢が「おれはハードボイルドのここが好きなんだ」、そして「好きなハードボイルドをこうして書いてる」ということに終始している。


 語り口もとてもいい。人を逸らさない話術がある。たくさんの人と話してきた人の話し方だ。話がうまい。そして「文学をやってる感」がない。


 構えて聴かずに済む。


 大沢自身も構えて話している風がまったくない。自然体。聴いてるうちに聴いてる側も何となくハードボイルドが読みたくなってしまいます。大げさにいうと大沢の人間的魅力が感じられる講義になっていると思います。


 一流の作家が、自分の好きなジャンル小説への熱い思いを語ってくれる動画ってあまりないんですよ。

 こういうのに触れると、ジャンルが違うとはいえ、小説に魅了されていた同志、先輩に出会った! その人が小説を書いている! みたいな感動があっていいですよね。


 こういう話を聴くと、私も書きたくなってきます。ハードボイルドを? 私が? さて、どうでしょう(笑

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