8カオス ときには絵本を選んで買ってみる

 子供のころ、我が家にはたくさんの絵本がありました。母や伯母たちが保母(今でいう保育士)、や幼稚園教諭をしていたためでしょうか。数十冊はあったと思います。そして、その多くは福音館書店の月間絵本「こどものとも」でした。


「こどものとも」は、今も毎月新しい絵本が刊行されていていますが、子どもの私が手にしていたのは第200号前後の「こどものとも」でした。ウィキでみると、1972年頃の絵本です。その頃のわたしは理解出来る年齢でないので、きっと従兄弟のお下がりだったのでしょう。


 実家の母は、小学一年生になる息子に絵本を買ってくれますが、昔、私が読んでいた福音館書店の絵本からいくつも選んで買ってくれています。『ぐりとぐら』とか『だるまちゃんとかみなりちゃん』とか。よい絵本は、よい小説と同じで古びることがありませんね。


 私も息子には本を読んでもらいたいと考えていて、なにか絵本を買ってあげようと書店に行ったのですが、児童書のコーナーに置いてある最近の絵本にはピンとくるものがありません。どうも私の感性は磨耗していて、子どもの本を選ぶにはふさわしくないようなのです。なので、大人の私でもちょっと「?」となる絵本を選んで帰りました。


 ささきまき『やっぱりおおかみ』(福音館書店)


 知る人ぞ知る絵本。佐々木マキがはじめて描いた絵本で、当時の佐々木は漫画家として認知されてしました。読めばわかりますが、漫画の文法で描かれた絵本です。


 主人公は動物世界にたったひとり残されたオオカミ。彼が自分の仲間を探して街のあちこちに現れますが、ウサギやブタ、ウシ、シカ動物たちからは忌避され、受け入れられないまま街をさまよい続けて……というお話です。


 作中、オオカミはただの黒い影としてしか描かれず、セリフは「け」の一言のみ、という極めて印象的かつアナーキーな絵本です。


 国民的マンガといっていいかもしれない仲間大好き、仲間マンガ、『ワンピース』の対極にある作品といっていいと思う。


 やっぱり、オオカミはひとりなんだ、そのことを嘆いてもはじまらない。それを受け入れることによって、はじめてオオカミとして生きてゆけるんだ――というお話です。


 6歳には難しすぎるか(笑)


 妻には非常に評判の悪い絵本です。「子供らしくない」というのですが、子供らしいってなんだ、それはあんたの理想の押し付けだろ――とオオカミっぽい私は心の中で考えるのです。そして妻のいないところで一言。「け」と。

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